――北朝鮮軍を派兵しない可能性としては、どのようなものが挙げられるでしょうか。
派兵しないという理由は多くはありませんが、確実に存在します。最も重要な理由は、北朝鮮が鎖国政策をとっているということです。
北朝鮮指導部は、自国の国民が外国の生活がどのようなものかをよく知らないままにすることが、国内の安定に寄与するということを十分に知っています。
しかし、兵士を海外に送れば北朝鮮国内では可能な組織生活・集団生活がきちんと行われない可能性が出てきます。海外への派遣労働者を監視することさえ、簡単なことではありません。戦場で兵士を監視することは、それ以上に難しくなるでしょう。ウクライナ軍のほうに寝返る兵士さえ、出てくるかもしれません。
また、北朝鮮兵士が海外に行くことで、もし自分が海外にいればどのような生活が送れるかを考えるきっかけになり、実際に見て、体制に対する不満が生じるということも考えられます。一般の兵士だけでなく、将校にもそういうことが出てくるでしょう。
――北朝鮮がウクライナへ派兵する可能性、しない可能性、どちらもあるということですね。
現段階では、冒頭で述べたように、北朝鮮がウクライナへ派兵する可能性は高いが、より具体的な報道と証拠が出てくることを待つ必要がある、ということです。
【解説】北朝鮮の現在の内部事情は
北朝鮮とロシアとの関係をみると、経済的な交渉の内容は具体的な中身まで発表されることがあるが、軍事的な交渉やその内容については「交渉をした」ということは明らかにされるものの、具体的な内容が一切出てこないのが通例だ。
2024年6月に訪朝したプーチン大統領と、金総書記は新たな同盟関係を象徴する条約も締結し、関係強化が確実なものになった。実際に「今の朝ロ関係は最上のもの」という指摘も、北朝鮮国内から聞こえてくる。
ランコフ教授が指摘しているとおり、北朝鮮がウクライナの戦場に自国の兵士を送る可能性が高まっているように見えるが、一方でウクライナの大統領が述べたほどの規模で送ることができるのかを判断するのは、まだ時期尚早と考えられる。
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