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世界の歯車があちこちできしんでいる。それは、日本の隣・朝鮮半島にある2つの国でも起きている。核・ミサイルの高度化を強力に進め、ウクライナ戦争のためにロシアへ軍隊をも派遣した北朝鮮。2024年末、突如として大統領が「非常戒厳」(戒厳令)を布告し、国内政治に大混乱を生じさせた韓国。予測不可能な事態を繰り返す2つの隣国を、今後どうみるか。日本を代表する朝鮮半島問題専門家であり、慶応義塾大学名誉教授の小此木政夫氏に聞いた。前回の韓国に続き、今回は北朝鮮について聞く。
(前回「政治で『妥協』を許さない韓国のナショナリズム」から続く)
スターリン時代に回帰する北朝鮮
――その北朝鮮ですが、2024年にロシアとの関係を強く深めました。
2024年6月、ロシアのプーチン大統領が24年ぶりに平壌を訪問し、金正恩(キム・ジョンウン)総書記との間に「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。
この条約で注目すべきことは、冷戦時代の1961年7月にモスクワを訪問した北朝鮮の金日成(キム・イルソン)首相がソ連のフルシチョフ首相と締結したソ朝「友好協力相互援助条約」と同じく、「双方のうち、いずれか一方が個別の国家または複数の国家から武力攻撃を受けて戦争状態に陥った場合、他方は遅滞なく自国が保有するすべての手段で軍事的およびその他の援助を提供する」(第4条)との相互援助条項が存在していることだ。
他方、11月1日のラブロフ外相と崔善姫(チェ・ソンヒ)外相の「戦略対話」を前に、ロシア・ヤロスラブリ駅には1949年3月の金日成首相の最初のソ連公式訪問を記念する扁額が掲げられた。
このときの首脳会談で、スターリンと金日成は南朝鮮の武力統一について率直に意見を交換した。ロシアと北朝鮮の関係はスターリン時代に回帰しつつあるのだろう。
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