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政治で「妥協」を許さない韓国のナショナリズム 小此木政夫氏に聞く朝鮮半島の将来(上)

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2024年12月21日、ソウルの中心部で行われた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する抗議デモで、デモ参加者が掲げた韓国の国旗・太極旗(写真・2024 Bloomberg Finance LP)

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これまで世界秩序を構成してきた歯車があちこちできしんでいる。それは、日本の隣・朝鮮半島にある2つの国でも起きている。核・ミサイルの高度化を強力に進め、ウクライナ戦争のためにロシアへ軍隊をも派遣した北朝鮮。2024年末、突如として大統領が「非常戒厳」(戒厳令)を布告し、国内政治に大混乱を生じさせた韓国。予測不可能な事態を繰り返す2つの隣国を、今後どうみるか。
日本を代表する朝鮮半島問題専門家であり慶応義塾大学名誉教授の小此木政夫氏に聞いた。韓国と北朝鮮と2回に分けて掲載する。
(下「北朝鮮・アメリカとの首脳会談や核実験も視野に」はこちら)

時代錯誤な「非常戒厳」

――今回の「非常戒厳」事態からまもなく2週間が経ちます。

おこのぎ・まさお/1945年群馬県生まれ。慶応義塾大学法学部卒、同大大学院博士課程単位取得退学。同大教授、法学部長などを務める。『朝鮮分断の起源:独立と統一の相克』『朝鮮戦争―米国の介入過程』など著書多数(写真・今井康一)

2024年12月3日午後10時25分に、尹錫悦大統領が「非常戒厳」を宣布したことをテレビニュースのテロップで知ったが、あまりにも時代錯誤的であり、続報があるまで理解に苦しんだ。韓国の友人たちも同じだったようだ。

12月4日深夜に国会が開かれて戒厳令の解除が決議されたので、約6時間の茶番劇で終わった。12月7日に勢いづいた野党議員たちが大統領の弾劾訴追案を決議しようとしたが、与党議員が退席して不成立。結局、12月14日に再度提出され、可決した。

弾劾訴追案は憲法裁判所が180日以内に妥当性を判断する。そこで大統領罷免となれば、それから60日以内に大統領選挙が実施される。この間は韓悳洙(ハン・ドクス)首相が大統領権限を代行する。仮に大統領選挙が行われるようになれば、最長8カ月のプロセスだが、短縮は可能だ。

――なぜ非常戒厳という事態となったのでしょうか。

それは、韓国政治の極端な二極化と過剰な理念化(イデオロギー対立)だ。2024年4月の総選挙で与党が大敗した後、与野党間の極限的な対立が継続して、与党提出の重要法案が通らないという事態が出現した。

政治的駆け引きが苦手な大統領がそれを悲観し、さらに被害妄想を膨らませて、「非常戒厳」宣布によって形勢を逆転しようとしたのだろう。今回、尹錫悦大統領は信じられないほど安易に軍を動員し、かえって大統領弾劾に口実を与えた。

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