ガストとサイゼ、「ファミレス衰退」での戦略の違い ちょい飲みに適応と、ファストカジュアルへの移行
ファミレスでちょっと飲むとき、メニューを見て「ちょっと量が多いんだよなあ」という経験をお持ちの方は多いのではないだろうか。私もその1人である。
特にお酒を飲んでいると、そこまで食べない、けれどちょっと小腹を満たしたい……という欲望を持つ人は多いだろうから、こうした需要に小皿メニューはぴったりだ(もちろん、家族で来た人でも、「もうちょっと食べたいんだよな」という時には最適である)。
また、メニューの種類も唐揚げからキムチ、ほうれん草ベーコンのようなおつまみから、パスタやピザのハーフサイズなどの食事のようなものまで幅広い。また、和洋中それぞれの食べ物が揃っていることも魅力だ。
酒を飲むときの楽しみの一つが「酒に何を合わせるか」、つまりマリアージュである。ハイボールに唐揚げを合わせるのはオーソドックスだが、あえてここはキムチにしてちょっと王道から逸脱してみるのもアリかな……などと、あれやこれや考える。
自分の人生を自分で差配している感覚。大袈裟かもしれないが、そんな感覚を味わうことができる。世間では体験消費だなんだといっているが、このワクワク感こそ、もっともプリミティブな体験消費なのだ。
ガストはアルコールも料理も種類がある。選べるのだ。まさに「ちょい飲み」の醍醐味を味わえるといっても過言ではない。
ファミレス業界内でのポジションの再構築を行う
さて、ガストがいかに「ちょい飲み」の聖地たりえるかはここまでの描写でおわかりいただけただろう。しかし、ガストがこのような「ちょい飲み」戦略を取るのはなぜか。
それには、現在のファミレス業界をめぐる状況がある。
日本ソフト販売株式会社が発表している統計データによると、2023年、ファミレスの数は前年比で店舗数が1.8%減少している(前年は3.1%減)。次に掲載するグラフはガスト、サイゼリヤ、ジョイフル、ココスという大手4社の国内出店数のグラフだが、それぞれ、じわじわ減ってきていることがわかるだろう。
このような状況の中、ファミレス各社が現在行っているのは「ファミレス業界内でのポジションの再構築」だと思う。これまでは「ファミレス=安めのレストラン」「家族で行けるレストラン」という印象だったが、各社がそれぞれの強みを発見しながら、より強く独自の色を付けようとしているのだ。
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