若者へ「黙ってろ」と言う上司が"組織を殺す"必然 「ベテランの経験、勘」通用しない時代になり⋯

✎ 1〜 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

低迷する日本でも、新しい需要やビジネスチャンスは間違いなく生まれている。問題は、そうした「新しいマーケット」や「新しいビジネスチャンス」に「古い現場力」で対応しようとしていることである。

もちろん、ベテラン社員も重要な多様性の一部だ。過去の経験則が活きるものについては、ベテランの知恵や経験を活かすことは、これからも大切だ。

大事なのは、お互いをリスペクトし合う関係性の構築である。

お互いの意見に耳を傾け、意見の違いを尊重し、時には衝突や対立を恐れず、議論ができることこそが「新しい現場力」だ。

「多様性」「違い」を受け入れ、活かす

たとえば、若い社員の中には、ある専門分野に精通した即戦力の人材もいれば、桁外れのエネルギーやきわめて斬新なアイデアを持つ人もいる。

そんな人材を何年も「塩漬け」にして活かさないのは会社にとって大きな損失以外の何物でもない。やる気のある人材であれば、そうした待遇に不満を感じ、退職してしまうだろう。

「お前は若くて何も知らないのだから黙ってろ」は禁句である。

「何も知らない」ことは欠点でもなければ、マイナスでもない。むしろ、「過去に縛られない」という強みである。

人は程度の差こそあれ「アンコンシャス・バイアス」(無意識の偏見)から自由ではない。

たとえば、職場においても女性や若い人に対して見下したような態度をとったり、軽く扱ったりする管理職はいまだに多く存在する。

多様性の本質とは、ジェンダーやマイノリティに限らず、一人ひとりが持っている「違い」を認め、尊重し、活かし合うことである。

現場力を鍛える 増補改訂版: 「強い現場」をつくる7つの条件
『現場力を鍛える 増補改訂版 「強い現場」をつくる7つの条件』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

「違い」を認め、活かすためには、経営者や管理職がまっさらな気持ちで社員の一人ひとりと真正面から向き合い、「意見」とは「異見」であることを認識することが必要不可欠である。

「正解」のない時代に前に進むには、本気で意見を交わし、意見の違いや衝突を楽しむ「新たな空気」 を生み出す必要がある。

「厄介な問題」に対処するプロセスにおいては、必ず 「建設的対立」 が生まれる。

衝突を繰り返すことによってのみ、問題の本質に迫り、最適解に近づくことができるのだ。

「厄介な問題」に柔軟に対処し、「多様性を活かす現場力」へシフトすることができなければ、絶好のビジネスチャンスを逃してしまうことになるのだ。

現場力を鍛えて「強い組織・チーム」を作ろうと思えば、多様な個性を連携させ、組織をアップデートしつづけることが必須なのである。

 

「人の交流」「情報の交流」「知恵の交流」によって「つながる力」が高まっていく(イラスト『新しい現場力 最強の現場力にアップデートする実践的方法論』より)
遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事