東京で急増「貧しい日本人を排除するビル」の矛盾 富裕層向けの商業施設、なぜこうも金太郎飴化?
ブランディングの基本は差別化である。にもかかわらず、似たりよったりなビルなのは、長期的に見てまずいような気もするのだ。また、短期的な観点での投資が先行し、建物や施設が長期的な魅力を持てなければ、その地域の衰退に繋がりうるのは、バブルの歴史が証明している。
この、“都心のビル金太郎飴問題”(今、そう名付けた)を考えるにあたって、都心部でどんなビルが増えているのかを振り返っていきたい。
いま、都心の再開発で乱立するビルには、多くの場合「共通点」がある。実はこの共通点を考えるうえで面白いヒントを与えてくれるのが、Netflixで大ヒットした『地面師たち』である。新庄耕の大ヒット小説を映像にしたもので、架空の土地取引で巨万の富を得る「地面師」の暗躍が描かれるクライムサスペンスだ。
作品は、白金にある巨大な土地の架空売買をめぐって進んでいく。注目したいのは、だまされる側の不動産デベロッパー「石洋ハウス」が、その土地の取得後に建設予定の施設だ。気になる人はエピソード4の34分あたりを見てほしいが、そこでこの施設のパンフレットが登場する。いわば、フィクションの再開発案なのだが、この解像度がすごいのだ。
名前を「高輪COROX」といい、スローガンは「多様性の国際交差点」。正確な高さはわからないが、ある程度の高層ビルで、よく見ると中層階は「HOTEL FLOOR」、そしてその下には「OFFICE FLOOR」。どこかで見た配置だ。
さらに、低層階には独特の建築が施されている(木組みを使っていて、どことなく隈研吾っぽい)。そして地上には謎の「アートっぽいオブジェ」が置かれ、その周辺は適度に植樹がされている……。
なんだか見覚えがある。というか、見覚えしかない。
ホテルとオフィスとアートと植栽と…
例えば、麻布台ヒルズ。中〜高層階にはオフィスフロアがぎっしりとあり、さらに日本初進出のアマンの姉妹ホテルブランド「ジャヌ東京」も入る。低層階で目を引くのは世界的建築デザイナーであるトーマス・ヘザウィックによるきわめて独創性の高い建築。中庭にはさまざまなアート作品が置かれ、植栽も施されて緑豊か。
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