海外進出の度合いは、企業規模によってかなり顕著な違いがあることが分かる。以下で述べるように、この事実は、製造業の今後を考えるにあたって重要な意味を持つ。
これまでの海外進出は資本金100億円超の企業
海外事業活動基本調査において「大企業」とされているのは、資本金10億円超の企業である。
この範囲の企業のうち資本金100億円超の企業は、図で見るように、7割近くが海外進出している。これまでの海外移転の中心になっていたのは、このレベルの企業である。
ただし、業種によって、海外進出度には差がある。自動車や電機などの組立型工業の場合には海外進出率が高いが、それ以外の業種では大企業であっても海外進出していない企業がある。したがって、この範疇内の企業でも、今後新たに海外進出を行う企業があるだろう。また、現在すでに進出している企業も、今後海外拠点を増やすだろう。
大企業のうち、資本金が10億~100億円の企業では、海外進出率は約4割だ。つまり、大企業といえども、過半はまだ進出していないことが分かる。このレベルの企業は、今後海外移転を進めてゆくことになるだろう。
海外事業活動基本調査では、資本金3億円超10億円以下の企業を「中堅企業」と呼んでいる。図で見るように、この範疇の企業の進出率は、まだ16%に過ぎない。このレベルの企業は、資金調達能力などの面では、海外進出できる条件を満たしていると考えられる(ただし、人材面での条件が十分かどうかは疑問がある。これについては後述する)。
そして、系列企業の場合には、親会社が国内の工場を閉鎖して海外に移転すれば、それについて海外進出せざるをえないだろう。系列でなくとも、受注が減るため、国内生産は困難になるだろう。