大企業の系列に属している場合には、親会社の海外移転に伴って海外進出するだろう。しかし、同族会社の場合には難しいかもしれない。そうした企業は、以下に述べるレベル5企業と同じように、水平分業化戦略が必要と思われる。
資本金5000万円未満の企業は、本連載の分類で言えば、レベル5の企業が多い。すなわち、零細町工場だ。従業員は多くても数十名。個人経営であり、手工業的な生産に従事している場合が多いと思われる。経営規模から見ても、生産形態から見ても、海外進出はたぶんできないだろう。実際、進出している企業は、約10万ある企業のうちの400少々でしかない。率で言えば、0・4%である。これは、特殊な事情がある場合の例外的なケースだろう。
しかし、大企業の海外移転が進んで国内の工場が閉鎖されれば、このレベルの企業への発注は減る。国内に留まらざるをえないレベル5の企業から見れば受注が減るわけで、事業環境は悪化する。したがって、これらの企業をどうするかは、社会政策の上でも大きな問題だ。企業数は約10万と、日本全体の製造業の企業数の84%をも占めるのだから、産業政策上も、これらの企業をどうするかは重要な問題である。
これらの企業が国内に留まって生きる道は、大企業の下請けから脱却し、水平分業化を図ることだろう。特に技術力を持っている企業は、積極的に水平分業化を追求すべきだ。
ただし国内での受注は減るので、マーケットを海外にも求める必要がある。つまり、世界を相手にした水平分業化を目指す必要がある。そして、高価格製品を受注する必要がある。それは決して簡単な課題ではないが、必要なことだ。ここでも、外国人従業員の活用が必要になるかもしれない。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2011年12月17日号)
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