「ホテル三日月」経営危機からベトナムで復活の訳 日本企業が続々躍進「加速経済ベトナム」のいま

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こうした苦難を乗り越えて、ダナン三日月は2022年6月にオープンする。ベトナムでもコロナ禍の影響はまだ残っていたが、とはいえ「ベトナムだから」うまくいったという解釈もできるようだ。

「ベトナムは他国よりもはやく経済活動を開始し、コロナ禍でもプラス成長を維持するなど見事な政府対応をしていた。だから『半分程度の客室からスタートさせるべき』という保守的な意見を一蹴し、当初から294室の新ホテルと既存の48室のヴィラを一斉にグランドオープンすることにした」と小高さん。結果、オープンして最初の土曜日から稼働率が90%を超えるなど、幸先の良いスタートを切ることに成功したそうです。(114ページより)

ベトナム人スタッフの「優秀さ」に脱帽

だが、この成功の最大の功労者は、なんといっても現地のスタッフだったと小高氏は感じているという。急ピッチで準備を進めたため、当初はサービス面に多少の不備はあったものの、「優秀なスタッフたちが順次、改善してくれたおかげで、食事も接客も格段にレベルアップした。いまではベトナム人スタッフの半数以上が5つ星レベルのサービスを身につけ、誇りを持って、仕事に取り組んでくれている」のだそうだ。

実際、ダナン三日月のスタッフたちが笑顔を絶やさず、テキパキと働いている様子を見ていると「多くのベトナム人がサービス業に向いている」ことがよくわかります。
小高さん自身、そのことを痛感しており、「日本やベトナムでホテル三日月流の人材教育を実践してきたが、多くのベトナム人スタッフは一昔前の日本人のように良い意味でお節介で、気配りができる。そのマインドはサービス業の根幹となるものなので、人材教育も想像以上にスムーズに進んだ」と言います。(115ページより)

コロナ禍の収束以降、ダナン三日月の勢いはさらに伸びたそうだ。2022年6月からの1年間だけでも、宿泊と日帰りの合計で49万人もの来場者を受け入れたというのである。この数字はダナン市に進出している5つ星ホテルのなかでも屈指のもので、2期目については年間66万5000人に達しているという。

ベトナムという国が持つポテンシャルと、それを下支えする勤勉な国民性、そして中小企業ならではの強みを活かした日本型経営が、見事に噛み合ったケースだといえるのではないだろうか。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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