「ホテル三日月」経営危機からベトナムで復活の訳 日本企業が続々躍進「加速経済ベトナム」のいま

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最終的には誤解も解け、ホテル三日月はコロナ禍に立ち向かったホテルとして賞賛されたが、それでもこの受け入れにより予約が合計6万8000人分もキャンセルになる事態が発生。ダナン市での開発を進める最中に黒字倒産の危機に直面する。

そこで「『自分の命などどうなってもよいから会社だけは救っていただきたい』と相談したところ、「日本のためにがんばったホテル三日月に1円たりともお金の心配はさせない」と商工中金が手を差し伸べたのだった。

とはいえコロナ禍はまだ、いつまで続くかもわからない状況だった。そこで小高氏は断腸の思いで、2020年3月から勝浦スパホテル三日月と鴨川スパホテル三日月の売却を検討する。

「特に創業の地である勝浦スパホテル三日月の売却は苦渋の決断だったが、ダナン市でのビジネスを確実に成功させるには、いかに国内の赤字を止めるかということが肝心だった。(111ページより)

結局、ホテル三日月グループは勝浦スパホテル三日月と鴨川スパホテル三日月の経営権を譲渡し、不退転の決意でダナン市でのビジネスに臨むことになった。

建築工事ストップの危機

しかし、当然ながらダナン市もコロナ禍のロックダウンによって、ベトナム中の工事がすべてストップしてしまっていた。そのためダナン三日月の建設も一筋縄ではいかず、ベトナムのゼネコンが倒産するのではないかという臆測も飛び交った。

しかし、小高さんは「ゼネコンが苦しい状況にあるなら、うちが過払い気味に払えばいい。そうすれば感謝してくれるだろうし、当社の工事に人員も気持ちも投入してくれるはず。困っているのはどちらも一緒だし、これまで常に逆張りの発想で頑張ってきたのだから、その判断を貫こう」と決断。(113ページより)

その狙いは見事に的中し、工事現場の活気は最高潮に達したという。中小企業ならではの意思決定の速さと逆張りの発想、そしてベトナムへの情熱と愛によって、コロナ禍のマイナス機運を上昇機運に転換してみせたのだった。

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