「ホテル三日月」経営危機からベトナムで復活の訳 日本企業が続々躍進「加速経済ベトナム」のいま
ベトナムのリゾート地といえば、すぐに思い浮かぶのは中部に位置するダナン市だ。世界的に有名なミーケービーチ沿いには、ハイアット リージェンシー ダナン リゾート&スパ、インターコンチネンタル ダナン サン ペニンシュラ リゾートなどの5つ星ホテルが軒を連ねる。
一方、ホテル三日月グループは2022年6月、5つ星ホテルが一軒も進出していないダナン湾に総額120億円を投じて「ダナン三日月ジャパニーズリゾート&スパ」(以下、ダナン三日月)を開業。従来の5つ星とは一線を画すスタイルで、総面積3万7000坪の敷地にホテルとヴィラ、温泉&アクアドームゾーン(全天候型スパドーム)、屋外プール、ビーチサイドクラブなどを擁する巨大リゾート施設をつくりあげた。
こう聞けば、なぜこれほどのチャレンジをしたのかと疑問を感じるかもしれない。しかし、その理由はいたって明快だ。創業者である前代表の故・小高芳男氏がダナン市に一目惚れしたことがきっかけだったのだ。
ダナン市の人口は約125万人(2023年)だが、半径300km圏内の人口は1150万人に達し、流入観光客数の年間目標(コロナ禍前)は800万人。そんな同市の観光地としてのポテンシャルに着目した創業者の直感に基づき、ホテル三日月グループは日本のホテル三日月と同じ「親子3世代」をメインターゲットに据えたビジネスを展開することにしたのである。
なお、この一大プロジェクトにおいてもっとも重視されたのは意思決定の速さだったようだ。
創業者の逝去を乗り越えてM&Aを断行
ところが、その直後に前代表が逝去したためプロジェクトは頓挫するかと思われたが、前述した現代表の小高芳宗氏は祖父の意思を貫徹。前代表が亡くなってわずか2日後にM&A費用の25億円をホーチミン市に送金した。そこには、「非居住者口座に現金を持ったまま交渉することで、創業者が他界しても、自分たちが本気であることを伝えたかった」という決意があったようだ。
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