「ホテル三日月」経営危機からベトナムで復活の訳 日本企業が続々躍進「加速経済ベトナム」のいま

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その成長性にも見るべきものがある。コロナ禍による入国規制、行動規制の影響が大きかったにもかかわらず、2020年と2021年でさえ2.9%、2.6%とプラス成長。世界的な物価高が問題視される昨今も、2045〜2050年に先進国入りという政府目標のもと、6〜8%の成長を遂げているというのだ。

他にもビジネス的な面を見てみると、外資規制が他の東南アジア諸国よりも比較的緩やかであること、製造専門職やIT人材が豊富なこと、親日的であることなど魅力は少なくないようだ。

日本人初のベトナム公認会計士が見た魅力

著者は、ベトナム初の日系会計事務所であるI-GLOCALグループの代表として、日本企業のベトナム進出を支援している人物。初めてベトナムを訪れた1993年当時のベトナムは決して豊かとはいえない経済状況だったものの、現地の人たちは笑顔と活気に満ちていたという。

バブル経済崩壊直後の日本とは正反対の雰囲気を刺激的かつ魅力的に感じたため、ビジネスの拠点として注目。1999年末にはアーサーアンダーセンベトナム(現・KPMGベトナム)に出向し、翌年には日本人として初めてベトナム公認会計士試験に合格。2003年に創業したという経緯を持つ。

つまりは20年にわたってベトナムの成長を目にしてきたわけで、その盛り上がりをリアルに映し出したのが本書だということだ。

なお特筆すべきは、アミューズメント・レジャー、食、DX(デジタルトランスフォーメーション)、不動産、インフラ・電力など各分野においてベンチマークとなる進出企業に取材を試みている点だ。つまり読者は実際のビジネスを知ることで、ベトナムの現状をより明確に理解できるのである。

たとえば、個人的に強く共感できたのは「ホテル三日月グループ」の“社運をかけた取り組み”だ。かつて「ゆったり たっぷり の〜んびり」というフレーズが印象的なテレビCMを積極的に流していた千葉県木更津市のホテルがいま、ベトナムの観光業界で頭角を現しているのである。

ここに描かれた同社のストーリーは、まるでドラマか映画のプロットのように波瀾万丈でスリリング。そしてそこには、ベトナムの人々と日本の中小企業との理想的な関係が映し出されてもいる。

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