台湾への「戦略的曖昧性」をアメリカは変えるか アメリカ新政権で試される日本の外交力
その背景には、2つある。まず「もし、軍事介入をする」と明言すると台湾の独立派がアメリカの軍事介入を期待して独立に向けて動く可能性があるので、これを排除したいという意図。
もう1つは、「もし、軍事介入をしない」と明言すると、中国が安心して台湾統一に向けて動き出す可能性がある。これも排除したいという意図だ。
バイデン大統領はこれまで、4回も「台湾有事となれば、アメリカは助ける」と述べたことがある。ところが、発言直後には国務省「アメリカのスタンスはこれまでと変わらない」と大統領の発言を否定するコメントを出している。まさに、「戦略的曖昧性」だ。
台湾こそ日本への地政学リスク
ところが、この基本スタンスを「変えるべきだ」という声がアメリカで高まっている。「有事の際は、台湾を助ける」と明言すべきだと、複数の元政権幹部が述べている。元トランプ政権にいた幹部だけでなく、超党派の有識者も述べている。
その代表格は、超党派でアメリカ外交問題評議会の会長を務めるリチャード・ハース氏で、「戦略的曖昧性では、中国への抑止力を十分発揮できない」とし、「トランプ政権となれば、戦略的曖昧性から戦略的明確性(ストラテジック・クラリティ)」に変更されるだろう」と述べている。すなわち「軍事介入をする」と明言すべきということだ。ハリス氏が当選しても、このように変更する可能性はかなりある。
しかし、こうなると台湾の独立派に大胆な行動を起こさせる可能性を高めることになる。元来、頼清徳総統は独立志向が強い。アメリカは、台湾への武器の輸出も大幅に拡大する。
アメリカは、これらは「抑止力」として位置付けているが、もし、アメリカが「有事には軍事介入する」と明確な方針に変更すれば、頼総統ら独立派は「千歳一遇」のチャンスと認識する可能性は拭えない。
台湾の人々にとって「独立」は、今に始まった話ではなく、400年前から幾度も挑戦し、実現できなかった歴史がある。1624年にオランダの植民地となったが、その38年後、日本人を母に持つ鄭成功がオランダを追い出し、大陸の清に抵抗すべく政権を打ち立てた。
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