台湾への「戦略的曖昧性」をアメリカは変えるか アメリカ新政権で試される日本の外交力

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米中の軍事衝突が起これば、必然的に日本は巻き込まれる。在日米軍基地が中国の攻撃の対象になるのは明らかだ。

アメリカの戦略シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)のシミュレーションでは、「日本の参画がなければアメリカは勝てない」というものであった。

在日米軍基地の戦闘時での使用については、日本の許可が必要となるが、日本がそこでノーを出せば日米同盟の破局に繋がる。それゆえ、日本がノーとは言えないだろう。

在日米軍基地が攻撃されれば、集団的自衛権が発動されて、日本の自衛隊も戦闘に加わることになる。CSISのシミュレーションにおいては、中国軍を撃退できるもののアメリカ軍、自衛隊ともに大きな被害が想定された。これは、「最悪のシナリオ」である。

アメリカとイギリスとの関係を強化せよ

では、「最悪のシナリオ」をどう回避するか。まずは、岸田首相の最大の外交成果でもある「日本への信頼拡大」を継続しながら、防衛費の増大を着実に実行することだ。そして、インド太平洋における安全保障において、傍観者でなくリーダーシップを発揮することである。防衛費増大により、抑止力を高めることができる。

次に、イギリスとの関係を同盟レベルにまで引き上げ、日米英の3カ国がコアになり、インド太平洋の安全保障を守る枠組みを構築することが重要だ。これら3カ国に加え、オーストラリアやシンガポール、フィリピンなど関係が深い同志国との防衛連携を高めることである。(「今こそ日本とイギリスが関係強化すべき3つの理由」参照)

最後は、中国との関係強化だ。外交ルートはもちろん、経済や観光においての関係は強化されてよい。アメリカは、電気自動車などの対中国関税強化などに舵を切っている。トランプ氏が当選すれば、この流れはいっそう大きくなるだろう。

日本は是々非々で判断をし、中国からも信頼を勝ち得る努力が必要である。すなわち「現状を武力で変更するということがない限り、日本と中国との関係も強化され、アジアの平和は担保される」というメッセージを出し続けることが必要である。

中国を孤立させることは決して得策ではない。日本の新首相は、就任早々から東アジアの平和と安定に向けた外交力を問われることになる。

土井 正己 クレアブ代表取締役社長、山形大学客員教授

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どい まさみ / Masami Doi

大阪外国語大学(現:大阪大学外国語学部)卒業、2013年までトヨタ自動車に勤務。グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年から「クレアブ」(本部ストックホルム)で、外交関係の官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。本部の上級副社長も務める。

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