台湾、第2のTSMC目指すベンチャーが群雄割拠 激変した資本・技術・市場の今を投資家が語る
台湾証券取引所は2023年に台湾イノベーションボード(TIB)を新設、上場要件を緩和しました。黒字化要件を満たしていなくても、売り上げや運営資金といった別の指標で判断されるようになったのです。これによって利益を出せるようになるまで時間がかかる分野での企業が促進されました。
人材と技術:製造業と海外からベンチャーへ
「高い教育水準、技術力の高さ、優れたチームワーク」、これは台湾人材が世界で競争力を持つポイントです。つまり、人材は台湾ベンチャーにとっては最大のストロングポイントといってもいいでしょう。
国際経営開発研究所(IMD)のデジタル競争力ランキングによると、台湾は3位(人口2000万人以上の国と地域に限ったケース、2000万人以下を含めると9位)につけています。テック人材に関する評価を見ても、「人口当たりの研究開発者数」は1位、「研究開発の公的支出」「高等教育の成果」で3位、「PISA調査:数学的リテラシー」で4位、「大学卒業生に占める理系比率」で7位といくつかの項目で世界トップクラスと評価されています。人口規模以上にテック人材が豊富であることが台湾の強みなのです。
ただ、以前はそうした人材がベンチャー企業に就職することはほぼありませんでした。台湾トップ大学の理系卒業生はほとんどが半導体関連、電子機器製造に就職していたためです。加えて、2010年頃から台湾政府は「西進中国」戦略を打ち出し、中国で働くエリートが増えました。これがベンチャー企業の人材不足を招いたのです。
しかし、世界経済におけるベンチャー企業とソフトウェア産業の重要性が高まるにつれ、台湾のイノベーション産業も成長し、成功事例も増えてきました。現在ではハードウェアだけに人材が集中することもなくなってきています。潜在的な成長力の高さ、職場のカジュアルな雰囲気、大企業と比べて個人の能力を発揮しやすいという特長に惹かれた人材が集まり出しています。
このようにして、5年ほど前から台湾の人材、そしてアメリカや中国から戻ってきた帰国組によって、台湾ベンチャー産業には新たな活力が吹き込まれました。
シリコンバレーのベンチャー企業の成功、その最大のカギは巨大市場の存在にあります。魅力的なプロダクトを作ることさえできれば、現地には積極的な買い手がいる。ビッグテックやテック人材は新たな技術にオープンで、生産性を高めるプロダクトの導入に貪欲です。そして、シリコンバレーで成功できれば、英語という世界言語の優位を生かし、世界の英語圏に事業を横展開できます。
残念ながら、このルートは台湾ベンチャーが模倣できないものです。台湾市場の小ささだけではなく、台湾の大企業は新たな技術に対する支払い意欲が低いこともネックです。
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