台湾、第2のTSMC目指すベンチャーが群雄割拠 激変した資本・技術・市場の今を投資家が語る

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台湾InnoVEX、Computex
台湾ではスタートアップ、ベンチャー企業が次々と誕生し、経済成長の牽引役にもなりつつある。写真はスタートアップ企業が集まった2023年の台湾InnoVEX(編集部撮影)
台湾経済に対する注目がかつてないほどに高まっている。
言うまでもなく、要因は「半導体」だ。米中対立によって経済だけではなく国際政治の面でも重要性を増した。そして、AI(人工知能)ブームによってパソコン、スマホに続く新たな需要が切り開かれた。かくしてTSMCを筆頭として数々の半導体企業がひしめく台湾は、世界経済の焦点となった。
だが、半導体だけに注目すると台湾経済のダイナミズムを見誤る。今、台湾から新たなテック企業、ベンチャー企業が続々と生まれているのだ。
「イノベーションに投資し、新世代の隠れた王者を育てる。そして、量子コンピューター、ロボット、メタバース、高精度医療など各分野の先端テクノロジーにはすべて大胆な投資を行う」
これは今年5月20日の頼清徳新総統による就任演説の一節だ。演説では「民主主義社会におけるドローン・サプライチェーンのアジアセンターを目指す」「中低軌道衛星による次世代通信の発展」など、新興分野への野心を露わにしている。
なお、「隠れた王者」とは一般的な認知は低いものの、特定分野では圧倒的な技術力とシェアを持つ企業を指す経営学の用語である。人口2300万人と地元マーケットが小さな台湾では最終製品を販売する有名企業は育ちづらい。
ゆえに表の王者ではなく、他社に重要部品やソリューションを販売する隠れた王者を目指す傾向が強いというわけだ。ファウンドリー(半導体受託製造)市場で60%超のシェアを持つTSMCがその典型だが、第2第3のTSMC、「隠れた王者」を生み出す動きが始まっている。
台湾のベンチャー企業とインキュベーションの潜在能力は軽視できない。次世代の台湾ベンチャー、台湾経済はどのような可能性を秘めているのか。日本企業との協業の可能性をどう見るべきか。
このテーマについて、台湾のベンチャーキャピタル「チェルビック・キャピタル」(心元資本)の創業パートナー、鄭博仁(マット・チェン、Matt Cheng)氏に話を聞いた。同氏はエンジェル投資の専門家として世界に投資し、物流テックのフレックスポート(Flexport)、後払いサービスのペイディ(Paidy)など15社ものユニコーン企業を見いだしてきたトップ投資家として知られる。アメリカや中国のベンチャー急成長を見てきた経験から、台湾ベンチャーには現在、「資本、人材・技術、市場」という飛躍の3要素がそろっていると指摘する。以下、チェン氏の話である。

株式上場が相次ぐ台湾ベンチャー

台湾のベンチャー業界はホットです。2021年から有力ベンチャーのIPO(新規株式公開)が続いているのが象徴的でしょう。

2021年にはAIベンチャーのエイピア(Appier)が日本上場、私もジョインしていたリテールSaaSの91APPも台湾で上場しました。翌年にはスマートモビリティのGogoroがアメリカのナスダック市場でSPAC(特別買収目的会社)上場を果たし、2023年には電話の着信番号識別アプリ「Whoscall(フーズコール)」を擁するGogolookが台湾のベンチャーボードで上場しました。

台湾はこれまでも多くの企業が誕生してきましたが、ベンチャーキャピタルから資金を得て急成長する、いわゆるスタートアップ企業がIPOにまでこぎつけた点、そして台湾が得意とする製造業ではなくソフトウェア産業でも注目企業が登場してきた点は過去とは異なります。

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