老いた自分と対面「老化アプリ」想定外の利用価値 「未来の自分」を知ると人生が充実する不思議

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バーチャルリアリティーで未来の自分と出会ったくらいで、「現在の自分の生活が改善されるのか?」と思う人もいるだろう。私には、そう思える理由があった。

ここで北カリフォルニアの大学生、アンモル・バイドの話をしよう。パンデミックに突入してからの1年間、彼の食生活は惨憺たるものだった。

自分の老けた顔を見た若者の非行が減少

なにしろほとんど毎日シナモン味のシリアルとチキンサンドウィッチしか食べていなかった。この怠惰な食生活があだとなり、彼は13キロ近く太ってしまった。従来のダイエットで減量を試みたものの、効果が出ない。そこで彼が目をつけたのが私たちの研究だった。 

彼が私にくれたメールによると、研究についての話を読んで、新たな戦略を立てたのだという。それは、未来の自分の理想的な容姿をオンラインツールで入手することだった。

バイドは自分の食欲にブレーキをかけるため、その画像を浴室の鏡と冷蔵庫のドアに貼った。「アイスクリームが食べたくて、キッチンのある1階に降りると、その画像が目に入るので、しぶしぶ自室に戻った」そうである。彼はその画像の容姿に近づくために低カロリーの食事や有酸素運動、ウェイトリフティングをこなし、その結果、体重を大幅に減らすことができた。

バイドの体験には、科学的な裏づけがある。研究者のサラ・ラポソとスタンフォード大学のローラ・カーステンセン教授の研究によると、老け顔に加工した自分の画像を見た成人は、画像を見ていない成人に比べて、運動量が増えたという。

この老け顔の画像は、道徳的な分野にも効果があった。私と同僚が研究室で作成したゲームで遊んでいた者は、自分の老け顔のカラー画像を見た後、ゲームで不正をするチャンスがあっても真面目にゲームに取り組むようになった。実際にフェイスブックで40代の自分の画像を1週間にわたって見続けた高校生は、その週に非行に走る確率がわずかながら減ったという結果も出ている。

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