ロッキード・マーティンが自衛隊に狙う次の一手 新レーダーや垂直発射装置のビジネスチャンス開拓に熱

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DDG(X)と呼ばれるこの後継艦には、SPY6が採用されるのか、SPY7が採用されるのか。SPY6はアメリカ海軍で2033年までに7艦種(DDGフライトⅢ、DDGフライトⅡA、CVN-74型、CVN-79型、LHA-8型、LPD-29型、FFG-62型)の65隻に搭載される見込みだ。

今後のアメリカ海軍との相互運用性を考慮すれば、たとえすでにイージスシステム搭載艦でSPY7を採用したとしてもSPY6のほうがよいのではないかとの意見も根強い。

これに対し、LMは「SPY7レーダーが他のSPYレーダーシステムと完全に相互運用可能であり、統合防空ミサイル防衛(IAMD)機能を提供する」と訴える。

導入コスト膨張への懸念

さらに、ASEVのコスト膨張の懸念も高まっている。現在、防衛省の試算では、ASEV2隻分の取得経費は7839億円(1隻当たり約3920億円)に及ぶ。

導入を決定した2020年当時に防衛省が想定していた「1隻当たり2400億円~2500億円以上」と比べ、約1.6倍も増えている。防衛省は円安や物価高の影響などを理由に挙げている。このうち、SPY7の取得契約額は約350億円、イージスシステムが約1382億円となっている。

財務省も2023年10月、ASEVのコスト膨張への懸念を示した。「日本が搭載予定のSPY7レーダーは、地上固定式レーダーとしてはアメリカで導入実績があるものの、艦載用としては例がない(スペイン及びカナダはSPY7艦載を計画中であるが、弾道ミサイル迎撃用ではない)ため比較が困難」と指摘する。

「今後多数調達が見込まれるアメリカの次期イージス艦は、別のSPY6レーダーを採用予定であるため、SPY7レーダーの補用品や本体価格にはスケールメリットが働きにくい」と警鐘を鳴らした。

ASEVをめぐる将来のコスト増大が懸念される中、木原稔防衛相と鈴木俊一財務相は2023年12月、今年度防衛予算の大臣折衝でASEVについて協議した。そして、①実効的なプロジェクト管理体制の構築を図ること、②イージス艦のこんごう型4隻の更新など今後イージス艦を取得・更新する場合にはその搭載レーダー選定について白紙的に検討することで一致した。

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