ロッキード・マーティンが自衛隊に狙う次の一手 新レーダーや垂直発射装置のビジネスチャンス開拓に熱

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政府は2020年12月に陸上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の代替案として、ASEVの2隻導入を閣議決定した。

イージスシステム搭載艦(ASEV)のイメージ(図・2025年度防衛予算概算要求資料から)

ASEVは海の揺れに強くし、安定できるように船体を大型化する。船体の大きさは、アメリカ海軍最新のアーレイ・バーク・フライトⅢよりも約1.7倍の大きさとなる全長190メートル、全幅25メートル、排水量が1万2000トンとなる。

船体の大型化に伴い、弾道ミサイルへの高い迎撃能力を誇る迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」、巡航ミサイルや極超音速滑空兵器(HGV)を迎撃する対空ミサイル「SM6」を搭載する。

また、世界最多の128のミサイル発射口(セル)を持つ。2032年以降に、アメリカ製巡航ミサイルのトマホークや国産の12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)、ドローン迎撃の高出力レーザー兵器をそれぞれ追加搭載できる「拡張性」を有する。これだけの対空能力を備え、「スーパーイージス艦」と評する声もある。

イージスシステムの眼・SPY7

そして、その中核となるイージスシステムの「眼」となるのが、LMが「世界最先端の多機能レーダー」と銘打っているSPY7だ。従来のSPY1レーダーに比べ、5倍の追尾能力を持ち、ロフテッド軌道や同時複数の弾道ミサイルに対処できると説明されている。

Mk.70のイメージ(図・ロッキード・マーティン社提供)

LMは2027、2028の各年度に1隻ずつ就役するASEVのスケジュールに合わせて、SPY7の製造が順調に進んでいることを強調した。2024年3月には米国防総省ミサイル防衛局とともに、ASEV向けのSPY7レーダー試験として、初めて宇宙空間の物体を探知・追尾する試験を同社モーレスタウンにある地上試験施設のPTC2で実施し、成功を収めたとアピールした。

同社によると、SPY7の中核を成す技術は、2021年にアラスカ州にある宇宙軍のレーダーステーションに設置された長距離識別レーダー(LRDR)に活用されているものと同じ。

具体的にはレーダーの基礎となるビルディング・ブロックのサブアレイ・スイート(SAS)のこと。ASEV向けのSPY7は328個のSASからなるアクティブ・アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー(複数のアンテナ素子を規則的に配するアレイアンテナを用いたレーダー)となっている。

1つのSASは、ちょうど机の引き出しを縦にしたような長方形の箱ほどの大きさ。筆者は実物を持ったが、10キログラム超のずしりとした重さがあった。

LMは、このSASの数を調整することによって、あらゆる任務に合わせて拡張可能だと説明した。裏を返せば、SPY7はこのスケーラビリティー(拡張性)を売り物にしてレーダーの派生型を広げている。

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