オーストリアの面積は8.4万km2と北海道とほぼ同じで、国全体にアルプスの山岳地帯が広がっているので、アウトバーンとそれに準じた高速道路網は総延長2200km程度と多くはない。しかし、主要都市の多くが高速道路で結ばれており、利便性は相当高い。
一方で、両国は世界でももっとも先進的な「環境大国」であり、人々の移動には鉄道が推奨されている。そのためか、少なくとも昼間は、高速道路を行き交う路線バス、つまり日本でいう「高速バス」はほとんど見なかった。
オーストリア連邦鉄道(OBB)は、国境を越える長距離列車の運行に積極的だ。2016年に廃止された夜行特急、シティナイトライン(CNL)の後継の運行を名乗り出たのもOBBであった。
また、両国とも中程度以上の都市には、必ずトラム(路面電車)や架線から電気を受けて走るトロリーバスが都市内の人々の移動を担っている。繁華街にはクルマは入れず、歩道とトラムのみ、というところを今回もかなり見た。
オーストリア第2の都市グラーツ、ロマンチック街道最古の都市であるドイツのアウクスブルク、ピルスナービールの発祥の地、チェコのピルゼンなどがそうである。
高速道路による収入を鉄道に充てる政策
驚くべきは、今年7月から3.5トン以上まで有料化の対象を拡大したドイツでは、増収分のおよそ半分を鉄道の改修等に使うと決まったことだ。慢性的な赤字に悩み、廃止も視野に入った路線が多い日本の地方の鉄道に、高速道路の収入を充てるなどという政策は、わが国では絶対といってよいほど実施できないであろう。
物流は高速道路、人々の移動は鉄道。もちろん飛行機も重要だが、「飛び恥(Flight Shame)」の掛け声のもと、鉄道と競合する短距離の航空路線を廃止し、移動を鉄道に委ねるという政策もフランスなどでは浸透している。
この夏、日本のみならず、世界各地で地球温暖化による猛暑、洪水、旱魃(かんばつ)が多発したが、人々の移動に使われる化石燃料をいかに抑えるか、そんなヨーロッパの苦闘が垣間見える夏の旅であった。
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