医師不足を助ける新しい資格「医師助手」の期待度 アメリカで始まり、日本でも導入の議論が進む

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PAは1960年代、医師不足が社会問題となったアメリカで始まった。その後、医師の監督下で診察・検査・処方などを行う専門職として地域医療を担い、その存在価値が広く認知されるようになった。

日本でも医師の働き方改革などを受け、2010年頃からPA導入に向けた議論が厚生労働省などで行われている。しかしながら、具体的な業務の検討が必要とされているものの、医師以外の者が医行為を行うことへの懸念や安全管理、診療報酬上の配慮が必要なことから、現在までに制度の創設には至っていない。

亀田総合病院にPAが院内資格として導入されたきっかけは、2009年にスポーツ医学科が整形外科から独立したことにある。

開設当初は少人数で対応可能な手術が中心だったものの、患者数の増加に伴い、手術件数はもちろん、紹介状の返信やサマリーの作成など診療以外の業務が膨れ上がり、医師たちを圧迫。さらなる診療拡充を目指していた大内洋医師(同科主任部長)は、研修医以上の知識を持った看護師によるサポートが必要だと考え、院内にPAを配置しようと動き始めた。

PA導入時を振り返る大内スポーツ医学科主任部長(写真:筆者撮影)

PA誕生までの道のり

PA創設にあたり、大内医師は前の職場で出会った理学療法士の市川顕さんに声をかけた。市川さんはPAの業務をするうえで必要な准看護師の資格を取得したうえで、2010年4月、スポーツ医学科のPAとして働き始めた。

だが、日本に存在しない資格であるPAにどこまでの業務を任せられるか。「そこを定義するのが難しかった」と市川さん。

PAに必要な看護師や准看護師の資格は、法律では「診療の補助」と「療養上の世話」と定義されており、その範囲を超えることはできない。院内での協議を重ね、詳細な業務範囲を少しずつ広げていった。

一方、市川さん自身にも医学的な知識や、診察に必要なスキルが不足していた。そこで、たくさんの書籍や論文を読んだり、学会などに参加したりするなど猛烈な勉強の末、医師と共通言語で会話できるレベルになった。

今では研修医や看護師などへの指導も行うようになり、PAのレベルの向上とともに、周囲からの信頼はさらに高くなっている。

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