台湾の大富豪はなぜ球団経営に夢中になるのか プロバスケ球団をめぐる金持ちたちの遊戯
台湾プロバスケ界に吹き荒れた宮廷ドラマさながらの離合集散や合従連衡は、台湾バスケの将来にとって大きな不安要素をもたらした。
いったい、プロバスケにどれほどの魅力があるのか。球団は儲かっているのか。オーナーはなぜここまで意地を張り合うのか。
当然ながら台湾の環境はアメリカNBAのそれと比べられず、さまざまな点で健全とは言い難いだろう。2023年から2024年のシーズンの入場者数を概算すると、チケット1枚800台湾ドルと仮定した場合、PLGとT1を合わせて6億台湾ドル。市場規模は大きくないことがわかる。
T1の前副会長の劉奕成は言う。「国外で成功した球団は、来場収入が全体の3割に達している。仮に台湾の球団もより多くのスポンサーを引きつけ、関連商品の売り上げを伸ばし、そして放映料を順調に獲得できれば、毎シーズン15億台湾ドルを達成することは難しくない」。
また、税制上では減免措置もある。先述の台北台新マースのゼネラルマネージャーで台新銀行副会長の尚瑞強は、真剣な経営はファンの支持を高めるだけでなく、親会社のイメージ強化につながる。ファンそのものが経済的ファクターになっていると考えている。
しかし各球団とも利益創出が難しい状況だ。
若い世代へのブランディングが重要
中信が今回、積極的にリーグ統一を進めた原因に、会長である辜仲諒が「野球ファンが老齢化する中、若者のバスケ好きがより鮮明に変わっている」とする中信前財務長の張明田の分析があったとされている。中信にとってスポーツ産業は長期投資の対象であり、将来の顧客や消費者を開拓する上で、「若い世代へのブランディングが重要」と考えたのである。
辜仲諒は取締役会でただちに中信信託金融がバスケと野球への投資をすることを提案。プロバスケの総利益をいかに大きくして投資のリスク低減を図るかに奔走したという。
台啤永豊レオパーズは2022年にNBAスターのドワイト・ハワードを獲得。その際、台湾のスポーツ産業市場は5000億台湾ドル以上と試算し、仮にバスケットボールが国技となるようなら1000億台湾ドルを創出することができると楽観視した。
しかし1000億台湾ドルの市場を作りだす前に、現実には赤字とオーナーのプライド問題で環境整備が進んでいない。フォルモサドリーマーズの陳立宗取締役は、「アメリカの独立戦争のように、戦争が終わってからゆっくり『憲法』について話し合えるのではないか」と、現在の台湾プロバスケ界の状況を語ったのだった。
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