日本生命と第一生命の「理念」の違いとは? 相互会社と株式会社・・・保険の未来を占う

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理念上「共同体型」の系譜に属するのが相互保険会社や共済などです。一方で「市場経済型」の血筋にあたるのが株式会社形態の保険です。現在の世界の保険を鳥瞰すると、大半が「市場経済型」で占められており「共同体型」はわずか1割、というデータもあるようです。ただこの2つは、あくまで理念上の区分に過ぎず、現実の保険の世界は両方が混在しており、明確に分けられる実態ではありません。

英国で誕生した「市場経済型の保険」を大きく保険産業として発展させたのは米国ですが、その一方で、保険本来の理念である「相互扶助」へのこだわりを強く残したのも米国でした。相互保険や共済を発展させたのも米国です。そのため米国の伝統的な生命保険会社には、最近まで相互会社の形態をとる保険会社が多く見られました。日本の県民共済や農協共済などの共済制度は、やはり米国で始まり日本へ移植された考え方です。

1990年代以降、欧米諸国で相互会社が株式会社へ転換する動きが見られました。市場経済の中で保険事業を絶え間なく拡大成長させるためには、株式会社のほうが経営戦略上優位性が高い、と考えられたからです。

日本でも株式会社への転換が相次いだ

遅ればせながら、21世紀に入り日本でも同様の動きが現れます。大同生命、太陽生命、三井生命、そして2010年には大手生保の第一生命が相互会社から株式会社へ転換しています。第一生命は明治時代に創立された日本で最初の相互会社でした。いわば創業の理念を捨てて株式会社へ移行したわけです。

生保業界トップの座を長らく守ってきた日本生命が、収入保険料ベースで第一生命にその座を明け渡した、と最近話題になっています。株式会社化した第一生命が、M&Aなどの戦略を自由に展開できたことが、その逆転の理由のひとつと言われています。日本生命は現在のところ、相互会社形態を堅持すると表明しています。

先日、今度は日本生命が三井生命を買収することにより再度トップへ、との報道がありました。戦略上の判断はともかく、相互会社のまま三井生命を子会社化することの理念上の意味合いがよく見えませんが、激しい首位攻防戦が続いています。今後、業界首位の座の争奪戦、業界の再編問題とも絡みながら、相互会社か株式会社かの形態論争が再燃する可能性が出てくるように思われます。

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