アダム・スミス『国富論』を読む 丸山徹著
まれに見る現実が日本にあるにもかかわらず、なぜそれをとらえる経済学が生まれないのか。「20年デフレ」の渦中で日々を過ごし、いつまでも長期停滞を脱せない現実に遭遇すると、誰もがそう思わずにはいられないのではないか。
経済学の祖といわれるアダム・スミスの主著『国富論』は、実に18世紀後半の英国社会の文脈があればこそ書かれたものであって、普遍的な学問的欲求から執筆されたのではない--。この事実を本書で知れば、現代日本の経済学への物足りない気持ちがますます募ってくる。むしろ「見えざる手」や「自然価格」といったことよりも、スミスが当時の現実にどのように向き合っていたか、彼の考え方がどのように形づくられたのかが大きく興味を引く。
マネタリズムや人口動態論ではなく、『国富論』に凝縮された同時代論と同様に、現代の日本経済をとらえる新しい試みがあってほしいと願わせる書だ。
岩波セミナーブックス 2730円
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