一流は、自分の「市場価値」なんて気にしない

「常識破りの扇風機」を生んだ「規格外」の発想

たとえば、あなたは「自分の市場価値をいかに高めるか」と考えたことはないでしょうか。これは、「市場」が求める規格に自分を合わせていこうとしてしまっている、典型的な例です。

また、就職活動時期に多く現れる、「内定を誇り、後輩に内定ノウハウを教えたがる学生」も同じ構図です。この学生は、「自分は企業が求める規格にうまく合わせて内定を勝ち取りました。みなさん、こういうふうに自分を規格化すれば、内定を勝ち取ることができますよ」と言っているに等しいのです。

こういった姿勢からは、決してイノベーションは生まれません。では、どうしたらよいのでしょうか。

まじめではなく、真剣になる

冒頭でお伝えしたバルミューダは、なぜ規格を超えていくことができるのでしょうか。それは、たとえば「GreenFan」の場合で言うと、「人はなぜ扇風機を使うのか」を真剣に考えたからです。バルミューダは、「人は風を浴びたいのではなく、涼しくなりたいから扇風機を使っている」と考えたのです。

確かにそのとおりです。私たちは、涼しくなりたいのです。家の外では、気温は高くても、風を受けると涼しく感じます。これは、風がゆっくりと「面」の状態でやってくるからです。しかし、従来の扇風機の風は、「渦」を巻いてやってきます。そのため、私たちはこの風を不自然だと感じ、長い時間、当たっていることができないのです。

バルミューダは、単に風を送るのではなく、「涼しくする」ことに対して徹底的に真剣になった結果、渦ではなく面で風を送り届けることを目指しました。それが、2重羽根構造で自然に近い風を再現するという、扇風機の常識を破壊するイノベーションにつながったのです。

バルミューダだけではありません。イノベーターといわれる人物はみな、規格に合わせるのではなく、自分自身が重要である、なすべきと考えることに対して「真剣」であり、結果として規格から外れていきます。

「真剣」とは、規格をものともせずに、自分が大事であると思うことに直結する動きをとることです。一方、規格化している状態や規格を守ろうとする姿勢は、「まじめ」であると言えます。

2つの違いを理解するために、こういう場面を考えてみてください。「自分の子どもが赤信号なのに横断歩道を渡ってしまい、気づくとクルマが迫っています」。こんなときに「赤信号なので、青になるまで待つ」というまじめさを発揮する親はいないでしょう。

なぜでしょうか。それは、親として圧倒的に真剣だからです。真剣になることにより、規格が目に入らなくなります。

「自分の子どもが横断歩道を赤で渡っているとき、クルマが迫ってきている」という状況と比べて、どれだけ真剣になれているのか。

まじめである規格化された自分から脱却し、真剣であろうとすること。これこそが、イノベーションと向き合うとき、最も重要な要素のひとつであると考えています。圧倒的に成し遂げるべき大事なことがそこに存在しているのか、否か。

その「何か」が存在し、それに「真剣」に取り組むことが、規格化を回避することにつながるのです。

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