日本株の本格的な戻りはいつになるのか 日経平均733円安、ついに1万8000円割れ

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当面の大きな焦点の一つは、米国FRB(連邦準備制度理事会)の利上げがあるかどうかである。当初は9月16~17日のFOMC(米公開市場委員会)で行われるとの見方が有力だったが、中国を中心とする新興国経済の予想以上の減速に、利上げの先送り観測が高まっている。

米国の利上げ見送りが一段の日本株安を招く懸念

今後、先送り観測が高まれば、一段のドル安につながる可能性がある。このドル安は円高への巻き戻しを引き起こし、日本の輸出企業の業績下方修正を連想させ、日本株の重石となりかねない。また株安の一因となってきた原油相場で安値更新の動きが止まらない点にも、注意が必要だ。

すでに本欄でも、ブレント原油が夏場に年初からの安値を更新すると、年末に掛けてさらに安値を切り下げる傾向が強いことを指摘した。WTI原油先物は40ドルの節目を明確に割り込んでいたが、ついにブレント原油も年初来安値を更新した。OPEC(石油輸出国機構)による減産の可能性が低いなか、原油価格の一段の下落がさらに株価を押し下げるリスクがある点にも注意したい。

また金相場が下落し始めた場合には、さらに注意を要する。つまり、投資家が株式投資で大きな損失を出した場合、その損失の穴埋めに利益の出ている資産の売却を進めることがある。投資家にとって、金は利益が出ている数少ない資産となっている可能性がある。その金までも売られるようだと、投資家の資産の痛みは深刻であると判断せざるを得ない。

市場では、株価急落で「政策当局への催促相場に移行した」との声も聞かれる。株価の押し上げと円安が基本戦略だった安倍政権にとって、支持率が低下する中、今回の株安は相当の痛手となっていることは想像に難くない。

だが、今回の株安が中国などの外部要因に端を発していることもあり、国内の追加的な政策だけで株価を大きく押し上げ、円安に誘導するのは困難である。安倍首相と黒田日銀総裁の「アベクロ会談」の緊急開催もささやかれるが、株価への影響は限定的なものになろう。

今後、中国政府が景気対策などを講じる一方、海外での政策対応により一時的に株価は戻すかもしれない。しかし、それが底打ちにつながるほど現在の株式市場の需給は改善していないだろう。公的年金による買い余力も大幅に低下する中で、安倍政権や日銀はどう動くのか。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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