ヨシタケシンスケの絵本の「映像化できない」魅力 「たくさんの発想」を持つことで視野が広がる
アイデアが多くて損することはない
──アルフレッド・ヒッチコック(映画監督)
ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』ブロンズ新社
『りんごかもしれない』では、学校から帰ってきた男の子がテーブルのうえにりんごが置いてあることに気がつきます。
しかし、男の子は「もしかしたら これは りんごじゃないのかもしれない」と考え出します。見た目がりんごに見えるだけで、まったく別のものかもしれないというわけです。
そこから男の子の思考がめぐりはじめます。りんごではなくて、大きなさくらんぼかもしれない。りんごではなくて、丸まった赤い魚かもしれない。りんごではなくて、恐竜かなにかの卵かもしれない──男の子はさまざまな可能性を検討しはじめるのです。
『りんごかもしれない』の紹介文には、この絵本のことを「発想絵本」としています。まさにさまざまな発想を楽しめる絵本になっています。それはまるで大喜利のようです。「りんご」というお題に対して、ひたすら回答する大喜利です。
この絵本のストーリーは、「男の子がりんごを見つけて」「考える」だけです。ストーリーらしいストーリーはありません。しかし、たくさんの発想が積み上げられることで、独特のダイナミズムを生んでいます。発想のミルフィーユです。
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