患者負担を別の患者に回す「受診時定額負担」の迷走

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 制度設計を任された厚生労働省は「1回100円の定額負担は将来にわたって増やす考えはない。翌年度以降は高額療養費制度の改善による給付費の伸びの部分は、保険者財政の中で(=つまり保険料や税で)負担する必要がある」と説明している。

だが、「無料→患者負担の導入(定額負担)→金額の引き上げ→定率化」へと変遷をたどった高齢者医療の自己負担の推移を見ても、いったん導入された制度が変更されることなく、将来にわたって100円が維持される保証はない。

受診時定額負担については、積極的な賛成論が少ないのも実情だ。

同制度を審議している厚労省の社会保障審議会医療保険部会では、医療団体関係者のみならず、学識経験者からも、「患者一般の負担を増やすには正当性の論理が必要。論理的に薄弱なところがある」(和田仁孝・早稲田大学法学学術院教授)、「受診抑制が働くので、軽々に使うべきではない」(岩本康志・東京大学大学院教授)などと否定的な意見が相次いでいる。

医療保険を運営する保険者側からも「選択肢の一つとして検討すべき。ただ、その後は保険者財政の中で負担せよという記述は、(保険料の引き上げにつながるので)財政中立とはいえない」(小林剛・全国健康保険協会理事長)といった声が上がっている。

患者負担軽減を狙いにしたはずの改革が、いずことも知れぬ方向へ迷走を続けている。

(岡田広行 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2011年11月26日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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