患者負担を別の患者に回す「受診時定額負担」の迷走
医療政策に詳しい二木立・日本福祉大学教授は次のように指摘する。
「高額療養費制度の改善が必要ということであれば、公的医療保険の主たる財源である保険料や補助的財源である税を含めてさまざまな選択肢を提示するべきだ。それをせずに、受診時定額負担しか方策がないというやり方は適切でない」
続けて二木氏はこうも語る。
「現に日本の患者負担割合は経済協力開発機構(OECD)加盟諸国の中で、韓国に次いで高い。これ以上の負担を増やすべきでないことは、『将来にわたって7割の給付を維持する』とした02年の健康保険法改正法附則や、06年の医療改革関連法案成立時の国会付帯決議でも明記されている。受診時定額負担はこれら合意事項にも反している」
専門家からも否定的意見
東京都内に住む鈴木勝利さん(64)は、受診時定額負担が導入された場合、その影響を被る。C型肝炎を患う鈴木さんは1カ月に6~8回、多いときには10回前後も診療所に通院、肝機能改善のための注射を打ってもらっている。
「1回100円でも回数が増えると負担が重い。将来、1回当たり200円、300円と増えていった場合、通院回数を減らさなければならなくなるかもしれない」(鈴木さん)
「注射の回数が減った場合、肝機能が維持できなくなり、倦怠感がひどくなる」と鈴木さんは話す。