(第23回)大企業が小企業の8割を支配している

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株式保有を通じて大企業が小企業を支配

次に総資産中の有形固定資産の比率を見よう。資本金5000万円未満の企業では、この比率は4割近い。つまり、資産は直接に事業に必要な資産(製造業であれば、工場、土地等)になっている。これは、企業として自然な姿である。

ところが、大企業では、この比率は3割を下回る。つまり、直接の事業だけでなく、他企業のコントロールに資産を使っている。資産中の有形固定資産の比率と投資用株式の比率にあまり違いがない。そして他企業コントロールのための資産が資産の4分の1近くを占めている。これは、改めて考えれば、異常な姿だ。

大企業による子会社の株式保有は、人的支配の基礎になっていると考えられる。人的支配の程度や形態は場合によって大きく異なるだろうが、大企業の定年退職者の天下り先や過剰人員の出向先として使われるだけでなく、経営にも影響を与えている場合が多いと考えられる。

だから、系列外との取引が認められない場合が多いと思われる。一般に、下請け企業の自由度はかなり制約されている場合が多いだろう。つまりこれは、市場を通じる自由な取引関係でなく、支配だ。系列内では、分業というよりは、支配が行われている。大企業は強いのだが、市場において強いのではなく、蛸壺の上下関係の中で強いのだ。

ところで、図には示していないが、負債総額中の金融機関借り入れの比率においても、規模別に顕著な差が見られる。資本金5000万円未満の企業ではこの比率が3割を超えるのに対して、大企業では2割程度でしかない。

以上のことを大ざっぱにまとめてイメージを描いてみれば、次のようになるだろう。

小企業は借り入れで資金調達し、資産の大部分は有形固定資産の形態で保有する。つまり、事業に専念している。しかし、その行動は、親会社に支配される。他方で、大企業では借り入れに対する依存度は低く、資産のかなりは子会社を支配するための株式保有に充てられている。こうして、「大企業が支配し、小企業が事業に専念する」という構造が成立する。これが「蛸壺資本主義」の実態である。

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