大昔、人類が生き延びたのは「犬のおかげ」だった? 3万年前「犬が人との生活を選んだ」といえる訳

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ネアンデルタール人の食生活や石器を調べると、数十万年間、変化が見られません。独自の世界にこだわり、新しいことに積極的でなかったとされます。

ネアンデルタール人の絶滅時期は、4万年ほど前とされ、その頃気候変動があったことが知られています。しかも当時ネアンデルタール人は小さな集団で暮らし、ゲノム解析から、多様性に欠ける状態であったこともわかっており、3万年前頃までにはホラアナライオン、ホラアナハイエナなどと共に絶滅したとされます。

イヌという仲間の力を借りた

常に生きにくい環境になったとき、生きものの間での食糧の奪い合いが起きるわけですが、ホモ・サピエンスはイヌという仲間の力を借りて、狩りの場で優位に立ったという考えです(パット・シップマン『ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた』原書房)。

世界にこだわり、新しいことに積極的でなかったとされます。

この説を支えるのは、ベルギーのゴイエ洞窟で出土したイヌと同定される化石が3.6万年前のものとされるところから、旧石器時代からイヌという仲間がいた事実が明らかになったことです。

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ネアンデルタール人の絶滅の理由にはさまざまな説が出されている状況であることを踏まえたうえで、興味深い説です。

頑なに従来の生活を守り続けたがゆえに滅びたネアンデルタールと、イヌとの協同に始まり、他の生きものと積極的に関わって牧畜、農業へと新しい生活を切り拓いていったホモ・サピエンスとを比べると、挑戦は大事だと思えます。

とはいえ、挑戦と同時に伝統の維持も忘れないのがよい生き方といえるのでしょう。

それにしても、人間は特別な存在であることも確かだけれど、動物の1つとして、他の仲間と関わりながら生きる存在でもあることを実感します。相手を利用するというような関係ではなく。

歴史を知り、これからを考える参考にしなければなりません。

中村 桂子 JT生命誌研究館名誉館長

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なかむら けいこ / Keiko Nakamura

1936年東京生まれ。東京大学大学院生物化学専攻博士課程修了。理学博士。国立予防衛生研究所をへて、71年三菱化成生命科学研究所に入り、日本における「生命科学」創出に関わる。生物を分子の機械ととらえ、その構造と機能の解明に終始する生命科学に疑問を持ち、独自の生命誌を構想。93年「JT生命誌研究館」設立に携わる。早稲田大学教授、東京大学客員教授、大阪大学連携大学院教授などを歴任。『自己創出する生命』『生命誌とは何か』『科学者が人間であること』『中村桂子コレクション・いのち愛づる生命誌(全8巻)』『老いを愛づる』など著書多数。

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