ファミマ、1万店で光る「デジタル看板」の奮闘劇 昨年度に黒字転換、収益改善の舞台裏とは?

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一部地域の実証実験を経て、近年は本格的にサイネージ設置などの投資を進めている。これまでに、広告関連事業に累計450億円以上投じてきた。

当初、競合関係者からは「自社商品やサービスの宣伝ばかり」「本当に儲かっているのか」と冷ややかに見られていた。実際、立ち上げ期は広告の入稿が少なく、広告事業を担う子会社は赤字が続いた。官報の決算公告によると、関係子会社3社の最終損益の合計は2022年2月期で18億円の赤字、2023年2月期も15億円近くの赤字だった。

しかし、足元で状況は変わりつつある。2024年2月期は11億円の黒字化を達成。ファミマは2029年2月期までに事業利益(日本基準の営業利益に相当)で100億円を目指す方針だ。

今年7月、デジタル戦略の発表会で細見研介社長は力を込めて語った。「ようやく日本でもリテールメディアという言葉が当たり前に使われるようになってきた。われわれがリテールメディアの時代を切り開いたという自負を持っている」。

店舗数拡大につれ、広告主が変わってきた

業績が改善した背景には、広告主の増加と多様化がある。ファミマビジョンで流れる映像は、子会社が制作する「番組」と広告主が出稿する「CM」に分けられる。番組はサイネージに注目してもらい、CMの視聴率を上げるために放映している。

サービス立ち上げからしばらくは、店頭に商品を配荷しているメーカーのCMが大半だった。しかし、一般的なコンビニの商品数は2500品目程度、全国の店舗に置かれているナショナルブランドのメーカーとなると、日本コカ・コーラやサントリーなど、ごく一部のメーカーに限られる。

速水氏(右から2番目)はGoogleでYouTube広告などのセールスを行うブランドソリューション営業本部の統括部長を経て2021年に入社。広告は細見社長(中央)肝いりの事業だ(記者撮影)

それが「店舗数を5000店、6000店と増やしてきたことで、広告主の属性も変化してきた」(サイネージの設置やコンテンツ制作を担うゲート・ワン取締役COOの速水大剛氏)。

ネットフリックス、アマゾンプライムビデオなどの動画配信サービスや生命保険など、ファミマで販売していない商品やサービスの広告が増えてきたのだ。足元では店頭に商品を置かない広告主が全体の6割を占めている。

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