女性対象の写真教室、いったい何が違うのか カメラメーカーも注目する「付加価値」とは?

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こうして自宅での教室に加え、企業とのコラボレーションも増え始めていった。ほかのカメラメーカーの教室で教えたり、女性向け写真術の本を執筆するなど、サロネーゼを超えた活躍の場が広がっていく。

今道さんが執筆した本。花や雑貨、ペットを対象に、ふんわりかわいい写真を撮りたいというニーズに応えている

20年もの間、人気サロンを続けられる理由

現在、自宅サロンでは火・水・木・金の午前午後各1クラスずつを開催。遠方に住む生徒も多く、北は北海道、南は沖縄までと全国各地から「LIVING PHOTO」を学びに生徒が訪れている。基本的な操作やスタイリングを教える「リビングフォトベーシック」、中級クラスである「リビングフォトインターミディエイト」、お料理を撮る「フードフォト」、さらに習いたい生徒のための「ブーケドフォト」という4つのクラスがある。

レッスン料は材料費込みで1回1万円。お稽古事としては決して安くはない。しかし「それだけ生徒さんの期待感も高まるんです。1万円に加え、交通費を3、4万かけてくる人が山ほどいるから、その期待に応えられるよう日々気を引き締めてレッスンを行っています」と今道さん。

花を撮影する今道さん。教室には20代から70代の女性が通っている

決して安くはないレッスン料にもかかわらず、今道さんがこれだけの生徒を集めて20年もの間サロネーゼを続けられているのはなぜか。

「来てくださる方への感謝の気持ちだけを大切に続けてきました。基本、サロネーゼは儲かりません。お金儲けしたいのであれば違う仕事のほうが絶対にいいです」

今道さんの人柄が伺えるこんな話がある。サロネーゼは集客が大変なため、1回来た生徒に繰り返し来てもらいたいというのがセオリーだ。だが、今道さんはリピーターを増やすことよりも、初心者を対象に基本を教えることを5年ほど優先して続けたという。「とにかくたくさんの人に教えたい」という思いからだ。自分の写真の技術を伝えることで写真の楽しさを多くの人に知ってほしい。家の中でも楽しく撮れる写真の魅力を伝えて、生活を豊かに過ごしてほしい。そんな思いを今道さんから感じる。

かつて独学で写真を学び始めたのは、お花の素敵な写真を撮って生徒にプレゼントしたいというシンプルな思いからだった。写真の技術だけでなく、今道さんのセンスやおもてなしの心にひかれる人が後を絶たない。それに加えて、今道さんには、周りの女性が何を望んでいるかをキャッチするビジネスセンスと行動力がある。それこそが、「サロネーゼ」のトップランナーとして活躍している秘訣といえそうだ。

大勝 きみこ フリーライター&エディター

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おおかつ きみこ / Katsuko Okatsu

月刊誌・企業広報誌などの編集を経て、2014年よりフリー。ハンドメイド、女性のライフスタイルを中心としたムック本などの企画・編集&執筆を手がける。

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