女性対象の写真教室、いったい何が違うのか カメラメーカーも注目する「付加価値」とは?

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やがてレッスン料を取るようになり、趣味から仕事にしたいという今道さんの思いが徐々に実を結んでいく。当時はインターネットがない時代だったが、花も用意しなくていいし子ども連れで行けるというので瞬く間に人気となり、口コミで生徒は増えていった。

「当時の駐在員の奥様で私の名前を知らない人はいないかもというほど、生徒を抱えていました」

4年ほど順調に続けていたが、ご主人の帰国が決まり、あっさりサロンをやめることになる。

女性ならではの世界観を構築した写真

今道さんの作品。スタイリングも本人の手による

帰国後は駐在からすでに戻っていた生徒を中心に、自宅で花を教え始めた。同時に、おもてなし料理を学ぶため青山にある「AMY’S(エミーズ)」という料理教室に通いだす。ちょうど偶然にも、AMY’Sではフラワーアレンジメントのクラスを始めようというタイミングで、ロンドンで花を教えていた今道さんに講師の話が持ち上がる。最初は試しにという話だったが、10年間教えることとなった。その間に次男の出産、ご主人の香港転勤もあったが、ロンドンで生徒を全員手放して大変だった経験から、香港滞在中は3カ月に1度帰国し、AMY’Sのクラスを続けたという。

サロネーゼとして順調にキャリアを伸ばす一方、生徒からも「アレンジメント作品を写真に撮りたい」という要望もあり独学で写真を学び始めたのが、今道さんにとって大きな武器となる。「きれいな写真を撮って生徒にあげたい」と試行錯誤を繰り返すこと数年。前後がふんわりボケて、花や料理の色が鮮やかに美しく表現される、今道さんならではの写真が撮れるようになってきた。

「ロンドンから帰国した際、当時の日本には花の先生があまりいなかったので、がんばればビルが建つかもと思いました。でも次男も生まれたばかりで家族優先でしたから、そこまでビジネスに踏み込めなかった」と今道さん。香港から帰国したとき、写真の道を追求すれば、ビジネスとしてのポテンシャルがあると感じたと振り返る。

「当時は、女性対象の写真教室がありませんでした。重たい一眼レフを持って外に出かけるのは女性にはきつい。だから、室内で花や料理を撮るための写真教室を開こうと思いました」

そして、写真教室「LIVING PHOTO」を2005年に始める。

企業とのコラボで、一歩先へ行く

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「LIVING PHOTO」を開始し半年ほど経ったころ、企業とのコラボレーションを思いつく。

「花は企業と組むというのがなかなか難しいけれど、カメラは企業とユーザーの橋渡しがしやすい。ユーザーの意見を企業に伝えていけば、家で教えているだけよりも一歩前に出られる」

家の中で、美しく飾った花を撮りたい女性向けに、ソニーのカメラを使用した「LIVING PHOTO」のクラスをソニーマーケティングへ提案した。すると、女性向けに何かをやりたいと考えていたソニー側とも意見が合致して、開催が決まる。使用レンズは50mm、F1.4の単焦点レンズに限定。コンパクトデジカメしか触ったことのない女性からすると、少しハードルが高い内容であったが、定員20名、月に3クラスがすぐに満席になるほどの人気ぶりだった。カメラを扱うのは数学的な知識も必要なため、メカに弱い女性には難しく感じる部分も多い。しかし、そこをわかりやすく楽しく教える今道さんの腕により生徒の満足度も高く、ソニー側も反響に驚いたという。

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