努力報酬、副業歓迎…イケダ流働き方の是非 「21世紀の報酬スタイル」は、実際使えるのか

拡大
縮小

「もし、一般の企業で同じようにやろうとした場合、そもそも、評価基準は何なのか、評価者によって結論が変わらないか、好き嫌いで評価をしていないかといった心配があります。労使関係が悪化すれば、被雇用者から、成果報酬の査定が違法で『人事権の濫用だ』と訴えられるケースが想定されます。成果報酬制度については、

(1)成果基準が公開されており、その内容が合理的であること

(2)評価方法が公平であること

(3)不服申立手続を備えていること

(4)減額幅の制限があること

といった点について、裁判で問われるケースが多いのが現状です。あまりに恣意的な制度であると『人事権の濫用』と言われるのです。イケダ氏の制度を一般企業が導入することは、現行労働法の下においては、多大なるリスクがつきまとうと言わざるをえません」

「時給に縛られた働き方をすべきではない」は共感

理想はあくまで理想で終わるということだろうか。

「繰り返しですが、イケダ氏の理念を批判するつもりは一切ありません。むしろ、『時給に縛られた働き方をすべきでない』というイケダ氏の提唱する理念は、個人的にはうなずけます。

終身雇用・年功序列型の日本的賃金構造が破綻しつつあるのもまた事実です。今国会の成立は断念したようですが、労働基準法改正により、時間に縛られず、成果によって報酬を支払う働き方(高度プロフェッショナル制度)の導入も控えており、旧来的な賃金体系からの脱却が検討されはじめています。

労働者の生活の安定と成果に併せた報酬支払いの方法を、どのように導入していくのか。今後10年・20年先を見据えた日本の労働政策における課題でしょうね。長時間労働や低賃金酷使の予防など、ブラック企業の規制をしつつ、労働生産性を上げるにはどうしたらよいか、検討すべきでしょう」

倉重弁護士はこのように話していた。

倉重 公太朗(くらしげ・こうたろう)弁護士
慶應義塾大学経済学部卒業。第一東京弁護士会所属、第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、経営法曹会議会員、日本CSR普及協会労働専門委員。労働法専門弁護士。労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、社会保険労務士向けセミナーを多数開催。
事務所名:安西法律事務所

 

弁護士ドットコムの関連記事
居酒屋で「ドリンクは結構です。水ください」そんな客に飲み物の注文を強制できる?
「AV出演」が知人にバレた!「恥ずかしくて死にたい」・・・回収や削除は可能か?
「鮮度が落ちる」と雇い止めされた「カフェ女性店員」 不当と提訴するも認められず

 

弁護士ドットコム
べんごしどっとこむ

法的な観点から、話題の出来事をわかりやすく解説する総合ニュースメディアです。本サイトはこちら。弁護士ドットコムニュースのフェイスブックページはこちら

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT