妊婦と子どもだけでも避難させてほしい--放射能汚染が深刻な福島市渡利地区住民の切実な訴えにも無策の政府

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妊婦と子どもだけでも避難させてほしい--放射能汚染が深刻な福島市渡利地区住民の切実な訴えにも無策の政府

福島県庁から約1キロメートルの近距離にある福島市渡利地区--。
 
 東京電力福島第一原発事故で放射能に汚染された同地区の住民らが10月28日、東京・千代田区の参議院議員会館で政府関係者に妊婦や子どもを放射能から守るための取り組みの実施を求める署名簿(1万1179筆)を提出した(タイトル横写真)。
 
 地区全体を対象とした詳細な放射能の測定および地区全体の特定避難勧奨地点指定、妊婦や子どもの避難に対する国の支援措置などを求めて政府関係者と交渉した。特定避難勧奨地点(原発事故後の1年間の放射線の積算線量見込みが20ミリシーベルト超)に指定された場合、住民は避難の際に政府による支援を受けることができる。

政府側からは、内閣府原子力災害対策本部の原子力被災者生活支援チームや原子力安全委員会などの担当者が出席。2時間以上にわたって議論が続けられたが、出席した住民からは「政府には妊婦や子どもに配慮する姿勢が見られなかった」(阿部裕一さん、38)などと、落胆する声が相次いだ。


■「妊婦や子どもはまったく配慮されていない。一律、20ミリシーベ
ルトの基準に押し込まれている」と語る渡利地区住民の阿部裕一さん

住民が政府に求めたのは、以下の6点。すなわち、

(1)渡利地区全体を国が特定避難勧奨地点に指定すること
(2)詳細な放射能測定を地区全域で再度実施すること
(3)妊婦や子どものいる世帯については、福島県伊達市や南相馬市と同様に、一般の基準よりも厳しい特別の基準を設けて特定避難勧奨地点に指定すること
(4)放射能の積算線量の推定および特定避難勧奨地点の指定に際しては、原子力安全委員会の通知に従い、食物摂取や浮遊物質の吸収をはじめとするすべての経路による内部被ばくと土壌汚染の程度を考慮に入れること
(5)自主避難者に対する補償および国や市による立て替え払いの実施
(6)住民の意見を聴取する場の設定およびその結果を特定避難勧奨地点指定の検討に反映させること

だが、政府の担当者は、「渡利地区全体を特定避難勧奨地点に指定する考えはない。除染をしっかり行うことで住民の不安を払拭したい」「南相馬市では地域の事情などを勘案して特定避難勧奨地点の設定をしたが、福島市の場合は同地点の基準に該当する2カ所の住民に避難の意思がなかった(ために指定しなかった)」との説明に終始した。

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