妊婦と子どもだけでも避難させてほしい--放射能汚染が深刻な福島市渡利地区住民の切実な訴えにも無策の政府

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 しかし、政府は住民の不安を取り除くための方策を用意しなかった。「国のやり方で測ってきた」(茶山課長)とはいうものの、「それならばなぜ特定避難勧奨地点の基準に該当した2地点を指定しなかったのか」との住民の指摘には、「住民の方が望まなかったから」と返答。
 
 「それはおかしい。指定したうえで、避難するかどうかは住民に意思に委ねるのが本来のあり方ではないか」との住民の疑問にもきちんと説明できなかった。

渡利地区では10月8日に福島市による住民説明会が開催された。その場で「なぜ、特定避難勧奨地点に指定しないのか」との住民の質問に市の幹部は「あくまで国が設定するもの。市が口をはさめるものではない」と答えた。
 
 だが、10月28日の住民との話し合いで政府側は、「地元の実情も考慮して(指定をしないとの)結論を出した」(前出の植田課長)とした。国と県や市の間でどのような検討を踏まえて指定を見送ったのかについては明らかにされなかった。

「渡利の子どもたちを守る会」の菅野吉広代表(43)は、小学生の子ども2人を持つ。その菅野さんは政府に詳細な再調査の実施を迫った。
 
 しかし、政府側は「除染を進めたい」と繰り返すばかり。しかし、その除染についても、「地区内で汚染土の仮置き場が決まらなければいつまでたっても着手できない」と菅野さんは指摘する。「その間、住民は被ばくし続ける。せめて妊婦と子どもだけでも安全なところに避難できるようにしてほしい」と菅野さんの訴えは切実だ。
 
 政府の無策が住民の生命を脅かしている。
 


■交渉には、7人の政府担当者が出席した。左端は福島みずほ・社民党党首
 
 
(岡田 広行 =東洋経済オンライン)
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