妊婦と子どもだけでも避難させてほしい--放射能汚染が深刻な福島市渡利地区住民の切実な訴えにも無策の政府
「除染着手には時間がかかる。それを待たずに、今すぐにでも放射能汚染についての詳細な調査はできるはず」「せめて除染が終わるまでの間、妊婦や子どもだけでも国の責任で避難生活の保障をしてほしい」。
住民からはこんな切実な声が上がったが、「みなさんのお気持ちは承った。ただし、(すみやかに調査しますということは)ここでは決めかねる。難しいところもあろうかと思う。検討はしていく」(原子力被災者生活支援チームの茶山秀一課長)などと、政府側は歯切れの悪い答弁を繰り返した。
渡利地区の住民が政府に不信感を抱くのには理由がある。渡利地区では8月下旬に、政府の原子力災害対策本部および福島県による放射能汚染に関する調査が実施されたが、同地区で暮らす約6700世帯のうちで5000世帯以上が調査の対象から外れされた。
危機感を抱いた住民の声を踏まえて、「福島老朽原発を考える会」などの市民団体が放射能測定の専門家である神戸大学の山内知也教授に依頼して9月14日に地区の汚染状況を調査したところ、学童保育室の前で子どもが遊び場として利用している神社の敷地内で、2.7マイクロシーベルト/時(高さ50センチメートル)の高い放射線量を計測。
■「自宅の庭先で5.8マイクロシーベルト/時の高い放射
線量が判明した」と語る地元町内会長の高橋照男さん
「南相馬市で適用された妊婦や子どもに関する特定避難勧奨地点の指定基準をはるかに超えているのに、国の調査対象外になっているのはおかしい」という声が上がった。
また、福島市が除染のモデル事業を実施した渡利小学校の通学路沿いの住宅前にある雨水ますや側溝でも、各22.6マイクロシーベルト/時、5.5マイクロシーベルト/時(ともに高さ1センチメートル)の高線量を記録。「側溝の泥すくい程度では十分な除染の効果は期待できない」と住民は考えた。