時間に追われる「仕事を断れない人」の深刻盲点 「仕事多すぎ」の原因は、"数値"で断る技術不足

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しかし、ここで「効率が悪いので」という説明だけでは上司も首を縦に振らないでしょう。具体的に効率とは何か、それが具体的にどれくらい改善されるのか、ツールを導入するコストがどれくらいなのか、さっぱりわからないからです。

さらにこの説明のマズいところは、上司のこれまでの仕事の仕方を根拠もなく「効率が悪い」と否定することになってしまうことです。2つの理由から、このような説明は避けたほうがよさそうです。

ではこのようなケースで上司の要求を断ることができる人は何をするのか。答えは現状のやり方と新しいやり方の違いを金額換算し、比較して説明することです。仕事の効率化を時間換算し、さらに時給や時間あたり付加価値という数字を用いることで、現状の仕事が生む金額と新しいやり方で生まれる金額の差が示せます。

企業にとって何より重要なのはお金(利益)です。経済的メリットがないという事実は、ビジネスという営みにおいて適切でないことを意味します。仕事を断る最強の方法ではないでしょうか。

「攻め」の時代から「守り」の時代へ

研修などの指導現場でビジネスパーソンのみなさまを見ていると、数値化というビジネススキルのあり方が10年前と明らかに変わったことを実感します。

10年前であれば、数値化というテーマは「攻め」のスキルでした。収益化するため。新規事業を立ち上げるため。仕事を獲っていくため。自分の市場価値を認めてもらうため。このようなことを目的に数値化が必要ですというメッセージに深く頷く人も多かったように思います。

しかし現代はまったく違います。やりたくない仕事をやらなくて済むように。自分にとって自由な時間を創出するために。先輩や上司に対して「NO」と言えるように。このような提案がとても刺さります。数値化が自分を守るためのスキルに変わったのです。

そのことの是非はここでは論点にしませんが、そのような時代になったことだけは間違いありません。

そんな「守り」の時代にいきいきと仕事をしているビジネスパーソンは、例外なく仕事の「断り方」がうまい。そのためのテクニックとして、普段からの人間関係や言い方などコミュニケーションスキルは重要かもしれません。しかし最後の決め手になるのは、やはり数値化された根拠でしょう。

忙しい現代のビジネスパーソンにとって、業務改善とは仕事を断ること、あるいはこれまでやってきた仕事を捨てることと同義です。「抱えている仕事が多すぎる」や「今の仕事の仕方を継続させることで精一杯」と悩んでいる人ほど、2つの数値化をぜひ取り入れてみてください。

深沢 真太郎 BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家

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ふかさわ しんたろう / Shintaro Fukasawa

一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。

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