需要低迷により、アジアの家電業界の見通しは悪化《ムーディーズの業界分析》
AVP - アナリスト 高橋良夫
アソシエイト アナリスト 出嶋槙也
ムーディーズは10月18日、アジアの家電業界の見通しを安定的からネガティブに変更した。この見通しは、今後12カ月から18カ月における業界の事業環境に対するムーディーズの見方を示すものである。
今回、業界見通しをネガティブに変更した主な理由は、今後、主要家電製品に対する需要の低下に伴い、家電製品の売り上げが低迷する可能性が高いと考えられるためである。足元では、世界経済の不確実性の高まりに伴い、欧米をはじめとする主要市場で消費者心理が悪化している。このため、ムーディーズは、2012年にかけて先進国で家電製品の売り上げが低下し、新興国でも売り上げ成長が減速すると予想している。ムーディーズは、主要市場における家電製品の販売動向が、アジアの家電業界の事業環境に大きな影響を与えると考えている。
家電製品に対する世界需要は、アジアの家電業界の売り上げ成長と収益性を左右する重要な要因である。このため、ムーディーズは業界見通しを判断するうえで、世界の主要市場(米国、欧州、日本、中国)における家電製品売り上げの成長率を主要指標として使用している。実際、ムーディーズの業界見通しとこの指標との間には、強い関連性が見られる。
業界見通しの決定に当たっては、4つの市場の構成比も考慮している。ムーディーズは、構成比を米国が約35~40%、欧州が約35~40%、日本が約15%、中国が約10%程度と推定している。したがって、業界見通しの決定に大きな影響を及ぼすのは欧米市場における家電製品売り上げの成長率ということになるが、この指標は足元で悪化傾向にある。
中国市場では堅調な成長が続いているが、全体に占める割合が小さいため、それだけで欧米市場の悪化を相殺することは難しい。また、直近で家電売り上げが減速している日本市場についても同様に、全体に占める割合が約15%であるため、業界見通しを決定づける要因とはなっていない。