需要低迷により、アジアの家電業界の見通しは悪化《ムーディーズの業界分析》

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 一方、スマートフォンとタブレットPCは、今後も成長が見込まれる数少ない例外となっている。しかしながら、これら製品において、強固なプレゼンスを維持している格付け対象のアジアの家電メーカーはほとんどない(現状、サムスン電子のみ)。また、多機能製品であるスマートフォンがコンパクトデジタルカメラや携帯型ゲーム機など、単一機能の携帯型デジタル製品の市場を侵食していく可能性があろう。

さらに、需要低迷、コモディティ(汎用品)化、過当競争などの影響で、液晶テレビ、大型液晶パネル等の製品に対する強い価格下落圧力が今後も続くであろう。これら製品のマージンの低さが、一部家電メーカーの収益性が低い要因となっている。今後はさらに、中国メーカーの台頭によって供給過剰リスクが高まり、液晶テレビや大型液晶パネル価格に対する下方圧力が一段と強まる可能性があろう。

事業環境の悪化は、日本の家電メーカーの市場地位ならびに格付けに、よりネガティブな影響を及ぼす可能性がある。円高に加え、液晶テレビや大型液晶パネル、スマートフォンといった主要製品市場における市場地位の相対的な低さ、国内需要の落ち込み等の影響で、パナソニック(A1、安定的)、シャープ(A3、安定的)、ソニー(A3、ネガティブ)は、韓国の競合メーカーであるサムスン(A1、安定的)とLG電子(Baa2、ネガティブ)に対し、劣勢に立たされる可能性が高いであろう。

韓国メーカー同士で比較した場合、サムスンはLGよりも事業環境悪化に対する耐性が強い。これは、サムスンの液晶事業へのエクスポージャーは、LGと比較すると小さいためである。また、サムスンは、スマートフォンや半導体事業において高い市場地位を維持しており、財務の柔軟性も高い。このため、事業環境悪化による影響は、LGより少ないものとムーディーズは予想している。

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