需要低迷により、アジアの家電業界の見通しは悪化《ムーディーズの業界分析》
また、家電製品の売り上げデータを用いることにはいくつかの利点がある。たとえば、主要市場における家電製品の売り上げデータは月次ベースで公表されており、主要家電製品のほぼすべてをカバーしている。また、消費者信頼感指数などの指標と相関関係がある。このため、業界における変化の兆候をモニタリングしやすく、将来予測を行ううえでも有用である。
実際、足元においては、欧米における消費者信頼感指数の低下が顕著となっている。また、日本、中国においても、消費者信頼感指数は低下傾向にある。こうしたことから、ムーディーズは今後、主要市場における家電売り上げが低迷し、主要家電製品の需給や価格、競争環境にネガティブな影響を及ぼすと予想している。
こうした消費者心理の悪化の影響に加え、家電製品に対する需要減速の背景には、より構造的な問題もある。それは主要デジタルAV製品の市場成熟化である。2000年初頭以降、家電製品の売り上げ成長を牽引してきた薄型テレビ、コンパクトデジタルカメラ、カムコーダー等の主要デジタルAV製品の普及は進み、台数ベースでの成長は鈍化している。一方で価格下落は続いているため、金額ベースでの市場規模は中期的に徐々に縮小していく可能性が高い。
図表:液晶テレビの需要予測
[+]画像拡大