米銀幹部に聞く欧州危機、世界経済、新興国ビジネスの動向--マイケル・M・ロバーツ シティバンク最高融資責任者
ユーロ圏のソブリン危機は収束せず、金融システム不安が拡大。信用不安、投資家のリスク回避姿勢が世界的に広がり、先進国経済はリセッション(景気後退)に陥る瀬戸際と言われる。
国際的な大手銀行はこうした状況をどう考え、どう先読みし、どのような戦略をとろうとしているのか。
米国本社の大手金融機関シティグループのグローバル・バンキング部門でコーポレート・バンキング(企業向け融資)およびキャピタル・マネジメント(資金管理)のグローバル責任者であり、シティバンクの最高融資責任者を務めるマイケル・M・ロバーツ氏(写真)に聞いた。
■欧州債務危機の解決には時間、景気後退の可能性も高い
--ユーロ債務危機の現状をどう見ているか。
いま何より重要なのはギリシャの問題を解決することだが、そのネックになっているのが、短時間に問題を解決できない欧州のガバナンス体制だ。その意味で、2008年の米国の危機対応とはまったく異なっている。
欧州では中央に権限を持った当局がなく、統一された財務省があるわけでもない。ECB(欧州中央銀行)も設計上、限定的な役割しか果たせない。結局、各国での懸案の法制化に時間がかかっている。いま焦点なのはEFSF(欧州金融安定化基金)だが、これをうまく機能させるためには、加盟17カ国の各議会で承認が必要という厄介な状況にある。
いま「グランドプラン」と呼ばれる包括的な危機対策が今月中に発表される見通しにあるが、そこではギリシャの政府債務の大々的な減免(ヘアカット)、経済価値にしておそらく50~60%の減免が必要となるだろう。また、EFSFが強力に役割を果たすことが重要だが、そのためには基金の原資が必要であり、その裏付けがなければ機動力を持つことができない。
--グランドプランの発表で状況は大きく変わると思うか。
そのプランがマーケットにとって十分に説得力のあるものであれば、そして各国が大量の資金を拠出するという保証があるのであれば、欧州の全体の状況は安定化してくるだろう。
ただ、プランの実施には時間がかかる。多くの欧州の銀行はギリシャやその他周辺諸国の国債の減免のために資本を増強する必要がある。各銀行がレバレッジを低下させることなどから、欧州の景気が減速するという影響も予想される。