米銀幹部に聞く欧州危機、世界経済、新興国ビジネスの動向--マイケル・M・ロバーツ シティバンク最高融資責任者
--QE3(量的緩和第3弾)の可能性をどう見るか。
政治家がサポートしておらず、ありえないだろう。FRBの内部でも意見が割れている。
--米国では「ウォール街占拠デモ」が長期化するなど、失業問題が長期化する中で、若者をはじめとした国民の所得格差、銀行救済などに対する不満が高まっているように見えるが、銀行幹部の1人として、こうした草の根の動きをどう見ているか。
当社のCEOも言っているが、若者たちのフラストレーションは理解できる。失業率が9%台と非常に高く、多くの米国民の生活が厳しい状況にあり、気持ちがわからないではない。大恐慌の時代もこうしたプロセスがあったが、民主主義だからこそ自由に意見を表明することはできる。
ただ、彼らは怒りや不満を表しているだけで、何を本当に訴えているのかが理解できない。銀行が救済され、1%の金持ちが得をしているということだけではなく、米国の問題はもっと複雑な事態になっている。
もちろん、銀行がもっと説明責任を果たし、持続可能な銀行制度を整備していくことは必要だと思う。
■邦銀はグローバルよりもアジア集中が得策、世界の中心は新興市場へ
--日本のメガバンクもアジア戦略を強化しているが、成功していると思うか。
成功していると思うし、適切な事業展開をしていると思う。アジアは域内貿易量が急増しており、もともと日本は中国と強い絆を持つ。インドとも関係が強化されている。
中国においては、日本のメガバンクは当社に比べて参入は遅いが、短期間に急速に展開し、取引の規模的には当社に匹敵するぐらいまでになっている。海外戦略としては、グローバルにどこにでも展開するのではなく、アジア地域に絞り込んだことは適切な戦略だと思う。
グローバル展開するには、当社にように非常に長い歴史がなければネットワークは整備できない。忍耐と資金も必要となる。邦銀がそれをやるのは得策ではないと思う。
ノウハウがなければグローバルで成功することはできないので、文化的に親和性を持ち、貿易やさまざまな商流の多いアジアに限定して事業を拡大するのがベストだろう。