米銀幹部に聞く欧州危機、世界経済、新興国ビジネスの動向--マイケル・M・ロバーツ シティバンク最高融資責任者
日本や米国の企業と同様、こうしたグローバル展開している優良企業はエマージングマーケット(新興市場)に事業拡大していきたいと今も考えている。シティは新興市場においてサービスを十分に提供できる立場にあり、顧客に当社のサービスをグローバルに利用してもらっている。
--「危機はビジネスチャンス」とも言われるが、シティの考え方は。
もちろん、当社にとって危機は大きなチャンスだと考えている。当社自身が08年に危機的状況に陥ったが、徹底的な改革でバランスシートも健全化した。そのため現在、危機にある欧州のライバル銀行に対して、競争上優位に立っていると思う。
たとえば、ドル建てで資金調達する市場が現在、大変混乱しているが、当社はドルベースの銀行であるため、こうした市場の混乱は当社にはチャンスとなる。また、クロスボーダーのM&Aがいま新興市場に集中しており、キリンがブラジルのビール会社を買収したり、米国の企業がアジアの企業を買収したりといったことが起こっている。
シティは世界101カ国に拠点を持っており、また、こうした企業や資産の買収はほとんどがドル建てで行われるため、そうした案件をくまなくカバーできることは大変有利だと思う。
■中国企業の国際展開でビジネス機会が急拡大、買収支援から資金管理まで
--中国など新興国の景気をどう見ているか。
新興諸国は欧米など先進国に比べ高い成長が続いている。今後は、欧米経済が減速することで、中国など輸出の多い国にとっては明確な影響が出てくるだろう。ただ、中国は鈍化しても7~8%、インドやブラジルは5~6%の成長が見込まれる。つまり、日米欧に比べれば、なお3倍、4倍の成長が続く。その差は当分変わらないだろう。
中国にとっての最大の課題は、輸出主導型から内需主導型へ転換すること。しかもインフレを悪化させないで実現することだ。それは一筋縄ではいかないだろう。
--中国の投資バブル崩壊を懸念する声もある。
そうならないことを期待している。中国の当局は、バブルが破裂するのではなく、徐々にしぼんでいく方向に持っていこうとしており、銀行の不動産融資を抑制し、中国国内で取得できる不動産を制限するなどの対策を打っている。