是枝監督「長編デビュー作」に残る"輪島の風景" 能登半島地震の復興を願い、リバイバル上映
――なんといっても主人公が嫁いだ先の漁港、鵜入の景色もすばらしいなと思いますが。
合津:珠洲のほうからずっと南下して探してまわったんです。でも鵜入がちょうど撮影にも手頃ないい形で。見つけた時は、わたしたちを待っててくれたのねと思いました。本当にきれいな場所だなと思いました。
中堀:やはり能登のああいう景色は広い画面が効いてくるから。鵜入の家は、大工さんが裏の板を全部剥がして新しいのを張って。それを美術スタッフが(経年劣化を見せるために)焼いて、またそれをブラシで擦ってと。
合津:年末返上でやってくれました。
中堀:最初(準備段階)は監督も来ないはずだったんですけど、そこまでやってもらったんだから。監督も、(主演の)江角さんも来て。自分たちがどういうところでやるのか、見たほうがいいよということで。来てもらいましたね。
まるで仕込んだかのように降った雪
――能登の景色が非常にすばらしかったのですが。
中堀:最後の雪のシーンなんかも、突然降ってきたものなんですよ。黒澤(明)組だったら大扇風機を8台ぐらい持って雪を降らせるところでしょうが、われわれにそれはできない。だからあそこは偶然なんです。
合津:私たちも現場で息をのみました。誰が仕込んだの? 違うよねって。
中堀:こんなもの仕込めるわけない(笑)。その前には、江角さんがバス停でひとりで待ってるシーンを撮っていたんです、どピーカン(晴天)で。
でも、この葬列もどピーカンじゃ話にならないだろうからということで、こっちは後にして。地元のエキストラさんに坂道の上に集まってもらって、撮ったんですよ。
あそこはぶっつけ本番で撮っていたんですけど、途中レンズの前を何かがちらついて。最初はゴミかなと思ったんですけど、それが雪だった。
――ちょっと前には晴れていたんですよね?
中堀:僕は高校のときに金沢にいたことがあるので、能登のこともいろいろと知っているんですけど。あそこは晴れたり、曇ったり、雪が降ったりというのがしょっちゅう起きるところだから。だからこういう偶然も起きるわけなんですよ。
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