女子ボクシング「性別をめぐる論争」の最大の問題 観戦する側にも求められる「リテラシー」とは

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そういう中で観戦する側に求められるのは、どういう規定やルールが自分たちの競技を一番面白くするかを真剣に考えている関係者たちが悩みながら定めた基準をまずは冷静に見守ること。そして、そのルールが暫定的なものだったとしても、それにのっとって選ばれた選手は、同じように讃える。それが観戦する人のなすべき、選手たちの努力に払うべき敬意ではないでしょうか。

凄まじい努力をして出場している

トランスジェンダーだからDSDsだからといって何のトレーニングもせずに今日そこにいるわけではありません。東京オリンピックで、女子フェザー級で金メダルを獲得した元ボクシング選手の入江聖奈さんは今回の件をめぐって、過去に対戦したことにある57キロ級の台湾のリン・ユーチン選手についてXで投稿。

「どこからが女性でどこからが男性なのか、早急に明確な線引きをする必要があるのはもちろんなんだけど、リンさんの鬼のような練習量を知ってる身としては、少し悲しい気持ちになる」と綴っています。

また、ケリフ選手と対戦して棄権したイタリア人選手も翌日に謝罪のコメントを出している。選手同士は各選手がどれだけの努力をしてそこに立っているのかをわかっているのだと思います。

東京大会の時には5位とか9位だったケリフ選手とリン選手が、今回は決勝、準決勝に残るところまで行っている。何もしないでここまできたはずはありません。オリンピックを観戦する側には、ルールに基づき競技している選手たちの、そこにたどりつくまでの努力を感じ取る余裕があってもいいのではないでしょうか。

來田 享子 中京大学スポーツ科学部教授

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らいた きょうこ / Kyoto Raita

1963年東京生まれ、大阪育ち。神戸大卒、中京大大学院博士後期課程修了、博士(体育学)。2008年より現職。専門はオリンピック・ムーブメント史、スポーツとジェンダー。日本学術会議第26期連携会員、日本体育・スポーツ健康学会 会長、日本スポーツとジェンダー学会 会長。(公財)日本オリンピック委員会理事、(公財)日本陸上競技連盟常務理事、(公財)スペシャルオリンピックス日本理事など。

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