女子ボクシング「性別をめぐる論争」の最大の問題 観戦する側にも求められる「リテラシー」とは

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性に関する自分の在り方は、心理のほかに社会と自分との関わりの中で確立されていきます。それを12歳までの間に確固としたものにし、親や周囲も受け入れる、というケースはかなりまれでしょう。

トランスジェンダーなどに対する人権の尊重、保護を大切にしている国であれば本人の希望があれば医療的措置を受けることもあり得ます。しかし、法律がなく、性別移行そのものが認められていない国もありますし、親にも話すことができない状況は日本でも見受けられます。

それらの観点では、当事者のリアルな人生に基づいて規定を決めているのだろうか、スポーツの公平性以前の、人が生きることに関するリアリティをどのように規定に含めていけばいいのだろうか、と考えてしまいます。

「公平性」を見極めるの難しさ

基準・規定作りにおいては、競技団体はもちろん、医学・法学・倫理学などの専門家、当事者を含む選手たち、当事者支援団体や人権団体など、多様なステークホルダーで多角的に議論することが求められています。また、参加資格がないと決定する場合は、公平性が損なわれることの証明がなければならないと、IOCは提唱しています。

その検証をしない限り、不公平とは言えないわけですが、基準を定めるためのエビデンスを得るのは難しい。だから各競技団体とも規定は作り始めているけれども、苦労しているということでしょう。実際、今は暫定ルールであり、定期的に見直すと明記されているものもあります。

今回、ボクシングについても改めて調べましたが、基準が公開されていません。その状態の中で、昨年の世界大会では、IBAは2人の選手を失格としました。なぜ大会中にこの2人だけを特定し、どのような基準を、どのような根拠に基づき決定したのか、まったくわかりません。

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