女子ボクシング「性別をめぐる論争」の最大の問題 観戦する側にも求められる「リテラシー」とは

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だからこそ国際オリンピック委員会(IOC)は今回、「選手は女性として生まれ、出場資格はパスポートの記載に基づく」という表現を使っています。だからといって、額面通りパスポートだけで判断しているわけではありません。

バッハ会長も「女性として生まれ、女性として育てられ、女性のパスポートを持ち、長年女性として競技してきたボクサーが2人いる」との声明を出しました。女性であり、今回のルール上、適正に女子競技に参加する資格があると判断された人たちだということに尽きます

こうした表現は国際的な人権基準に則ったものであり、パスポート上の文字面だけで判断していることと同義ではありません。そして、ルールの適正性は、その競技の関係者や専門家が議論して、可能な限り公平なものへとブラッシュアップしていくものだと思います。

13競技がトランス選手向けの参加ポリシー公開

これはトランスジェンダー選手の参加ポリシーについてですが、筆者の研究室が6月に調べた時点では、今回のパリ大会の実施競技になっている33競技団体のうち、13競技団体がホームページ上に公開をしています。

水泳や陸上、アーチェリーは2023年の6月、自転車は7月など、ほとんどが1年前、あるいは半年前と、これを適用しているかはわかりませんが、代表選手が決まる前に公表しています。

それぞれの競技には特性もありますし、基準を決めることは容易ではありませんが、中には正直、実質的にトランスジェンダー女性(出生時は男性だが、性自認は女性)が出場するのは難しいと思わせるものもあります。

例えば水泳の場合、トランスジェンダー女性は、「『タナー・ステージ(編集注:思春期の発達段階を示す1つの指標)2以降、または12歳以前に男性としての思春期を経ていない』場合にのみ参加資格を有し、12歳以降一貫してテストステロン値が2.5nmol/L以下である証明」が必要としています。12歳以前に男性としての思春期を経ていない、とは、12歳以前に思春期を男性の身体で迎えていない、と解釈できるでしょうか。

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