「世渡り上手な人」が大きな結果を出せないワケ 「干された時」こそ相手の懐に入るチャンス

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僕ははじめ、仕方ないよな、と思っていた。その病院で10年も20年も働いている外科医からしたら余所者だったし、なんの後ろ盾もなかったからだ。

だけど、これでは僕の腕が錆びてしまうし、外科医としてここで働き続けられなくなってしまう。それは別の上司との約束を破ることになるので、絶対にダメだ。

そう思った僕は、とにかく正面突破をしようと思った。他に根回しをして患者さんを割り振ってもらう作戦もあったが、それではいけないと思った。

正面突破は人生の扉を開く鍵

直談判でどうなったか?

そこで、何日もかけて「公平な仕事の分配について」という書類を作り、4人いた大腸専門外科医に公平に患者さんが割り振られる案を上司のT先生のところへ持って行った。

すると、

「こういうのは、飲み会でやるのがいいんじゃねえかな」

と言う。そこで、外科の大腸グループの医師を集めて郡山駅前で飲み会をやった。乾杯し、焦れていたがいつまで経っても本題に入らない。会が1時間を過ぎた頃、T先生は、

「お前にやらせるつもりはない。今のリーダーは俺で、次のリーダーはこいつだ」

とその病院で10年以上働いている外科医を指して言った。そして、

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「乗っ取るつもりか」

とも言った。

僕は一瞬目の前が真っ暗になりかけたが、ぐっとこらえて「自分は乗っ取るつもりなどない」こと、「次のリーダーはその先生でいいと思う、自分にそういう野心はない」ことを伝えた。

T先生は意外そうな顔をし、ホッとしたようだった。

そのあとから、僕は手術ができるようになった。たまたまではない。そこで得たロボット手術の技術が、また僕を飛躍させた。僕は業界の重鎮ばかりが書く手術教科書を、偉くもないのにたくさん書くことになったのである。

正面突破は人生の扉を開く鍵なのだ。

中山 祐次郎 外科医

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なかやま ゆうじろう / Yujiro Nakayama

1980年神奈川県生まれ。鹿児島大学医学部医学科卒業後、都立駒込病院、福島県高野病院院長、総合南東北病院外科医長を経て、湘南東部総合病院外科に勤務。2023年、福島県立医科大学で医学博士。21年に京都大学大学院医学研究科で公衆衛生学修士。専門は大腸がんや鼠径ヘルニアの手術、治療、外科教育、感染管理など。資格は外科専門医、消化器外科専門医、がん治療認定医、ロボット手術プロクター(指導者資格)。小説『泣くな研修医』(幻冬舎)はシリーズ57万部を超えるベストセラーに。著書に『医者の本音』(SBクリエイティブ)、『俺たちは神じゃない 麻布中央病院外科』(新潮文庫)、『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと』(幻冬舎)など。二児の父。

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